「世界経済の不安材料」
2014.2.16

 

       By kiyoaki Wada

あのプーチン大統領を激怒させたソチ冬季オリンピックが無事に開催された。開催までには焼き尽くされる程の神経を警備に注がれたと想像しうる。
 
 シリア問題でアサド側に立つロシアに対してサウジアラビアは反アサドの急先鋒であった。サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン王子はプーチンと直接会って、ロシアがシリアから手を引くことを迫った。それがソチオリンピックが平穏に開催できる条件であった。プーチン大統領はサウジアラビアに攻め入らんばかりの激怒に顔を真っ赤にしたことは、想像に難くは無い。
 
 イランと雪解けの演出をなしたオバマ大統領の仕打ちの前に、忠実な同盟国を演じてきたサウジアラビアは浮き足立った。これと似た状況にある安倍首相は、どこが同じで、どこが違うのであろうか。サウジアラビアは、中東での石油需給における調整弁のような役目を演じてきた。わが国とアメリカとの関係は、命令、服従の関係が際立っている。安倍首相は、自己主張をしだして来ている。それは諸外国に不快感を抱かせ始めてもいる。最たるものは戦後レジームへの変革とも取れる言動である。これは政治生命をまちがいなく縮める最たるものである。今回のソチ開会式に出席する自己主張は、西洋主要国がボイコットしている中にあってのそれである。命令を聞かなくなりだした安倍首相という印象を濃くした。
 
 ただ、まだ延命できているのは、国内では、消費税率を上げるといったポイントを稼いだことがある。財務省の印象は、これ以上の高印象はない。日本国そのものである財務省が背後で加担する策動からはしばらく無縁で有り得るというアドバテージを得た。アメリカとの関係では、沖縄の基地移転に道筋をつけたという高得点を上げている。以上より差し引き勘定すると安倍政権はプラマイゼロの存在意義ととらえうることが出来る。
 
 さて、本題に戻る。
 
 世界経済の不安材料は、勘ぐればきりが無い。
 
 一番の功労者はアメリカの量的緩和政策QEである。これに追随したのがイギリスとわが国である。ドルや円をジャブジャブと市場に流して債券市場の崩壊を食い止め、あるいはわが国のキャッチフレーズ宜しくデフレからの脱却。株式市場は株高に湧いた。
 
 アメリカのQE政策は、ここにきて見直され始めた。このままこの政策を続けることによりThe Fedアメリカ連邦銀行そのものが不良銀行となり崩壊の憂き目となる。だがQEの恩恵に与った新興成長市場EMにまともなとばっちりがいかないとも限らない。資金が引上げられたとき、新興国の通貨は暴落し1997年のアジア危機のパニックに陥らないとも限らない。
 
 アジアの危機といえば、戦争前夜にも匹敵する日中の敵対関係である。これはアメリカを巻き込んでの紛争に発展することが懸念されている。
 
 経済的に中国がアジアの盟主になりつつあることは数字が物語っている。中国が輸入する国別比率は、10%強の韓国が最大で、続いて日本、台湾、アメリカを中にはさんでオーストラリアの順となっている。
 
 ついでヨーロッパの不安材料は、南ヨーロッパの債務問題に端を発してのヨーロッパ統合崩壊の可能性である。それは、ある面では統合にともなうドイツのリスク、ドイツそのものの不況への傾斜との関数として捉えることができる。