嵐の中のロシア」



 

K.Wada 2014..11.23

 

 先ごろのAPEC首脳会議で、ホスト国、中国の習近平国家主席は、終始、ロシアのプーチン氏の側にいた。

 これは、いやでも、中国はロシアを支えるという無言の表明と受け取れる。

 ロシアにとってウクライナ問題は、まだ終わってはいない。ロシア経済に暗い影を落とし続けている。

 欧米からの制裁に先手を打って、ロシアは、中国との利益度外視での、経済契約に打って出た。

 市場価格より破格値でガスを中国に売却するという決断をプーチン氏は為す。中国との長期での供給が維持される。

 それは、ロシアにとって、制裁によって減じるであろうダメージを、少しでも和らげようとする行動であった。

 この9月にウクライナとロシアは停戦協定を結んだものの、ロシア側の重装備の武器がドンバス地域に移動している。協定は守られていない状況だ。

 プーチン氏の心中は、傍で見るほどには穏やかではあるまい。1998年ソ連崩壊のトラウマが甦っても決して不思議な状況ではない。

 わが国の北方領土返還が盛り上がった時期というものは、ソ連が国際的に苦境の極みにある時期と、なぜか一致している。翻弄され続けた過去がある。今回も当時と似通った状況ではある。当時との大きな違いは、中国が一枚絡んできているということである。ロシアは今の苦境を中国に寄り添ってもらわないと、如何ともし難い。中国とまともに口をきいてもらえないわが国のカードは弱いものだ。

 ロシアの今年に入ってからの資本逃避は、128bnド(約13兆円)に及んでいる。このことは、ドル債務をかかえる民間企業にはしんどいことであり、国内のインフレへと火がつきかねない。

 ルーブルは対ドル32%値を下げている。もうこの水準は危険水域だと言われている。プーチン氏は対抗手段を為さざるを得ない。この10月に、準備金を40bnドル(約4兆円)を切り崩した。ロシアの準備金は、422bnドルを持っている。国内の負債額は、政府と民間で731bnドルをほとんどドルで有している。

 この数ヶ月でロシアは162bnドルを動かす必要がある。

 準備金が330bnドルを切ったときが危険だと言われているので、ここ数ヶ月がヤマ場となりそうだ。

 ロシアの収入源は大半が油とガスからの収入である。ウラル産原油もので6月以降、値を下げてバレル83ドルである。115ドルから値を下げている。このことは、EUとの契約によりEU向けガスの販売価格は、原油とリンクさせているために、22%のダウンでの取引を来年から強いられることになる。また、新しいガス田の開発には、バレル90ドルがラインとなる。開発を見合わせることにより、一日あたり35万バレルの生産量が見込めなくなる。

 油に依存する経済は油の値段が下がることにより、財政は立ち行かなくなる。

 そうは言うものの、もう一つの大国アメリカは、発表されている統計とは異なって、実体経済は相当に悪いと危惧されだしている。中産階級は相当に疲労を濃くし、アメリカ経済の過半が依存している消費は伸びない。不動産市場が活況なのは、買い手が一般市民なのではなく、余った資金による銀行が買い手であるといった錬金術のごときバブルへの外観を呈している。

 あの元FRBのグリーンスパーン議長の金地金を重要視する発言は、ドル崩壊への不安を呼び込むものであった

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