量的緩和QEのもたらすもの」



 

K.Wada 2014..11.09

 アメリカの中央銀行であるFRBのジャネット・イエレン議長は10月29日に6年間に渡り続けられた量的緩和政策QEを終えると発表した。
 
 アメリカの景気回復はリーマンショック以前に戻ったことを高らかに宣言したようなものだ。
 
 失業率はひところの10%台から9月の5.9%と著しい回復をなしている。
 
 株式市場はリーマンショック時の6,500ドルから、9月の1万7,000ドルに戻している。
 
 前FRB議長から始められたQEはここにきて終焉することになる。
 
 前議長バーナンキ氏は、「QEは理論的には経済に効果がないはずだが、現実的には効果をもたらしている」という発言をしている。
 
 サブプライムローンから始まり、リーマンショック時の2008年の株価は1年半で6割も下げるといった異常なものであった。戦争に突入せざるを得なかった1930年代を彷彿させるものであった。
 
 理論的に効果の無い邪道とさえ見える政策でも打ってでる必要があった。飯が食えなければ、民主主義は崩壊するし、暴動さえおこりかねない。
 
 そこで登場したのがQEである。中央銀行が債券の買い手として全面に登場することになる。6年間で4兆ドルの金が市場に流れた。
 
 現在のわが国の場合は、日銀による債券の買取り額は毎月7兆円である。アメリカの規模までQEを続けたら5年間は継続しうる。
 
 アメリカが、この量的緩和政策を止めざるを得ない大きな理由は、バブルの再来が危惧されだしたからに他ならない。しかし、この政策を止めることは、世界経済に深刻な影響をあたえかねない。
 
 世界経済における、国境を越えた貸借にドルが70%の比率で関っている。新興国でのドルの逼迫は、新興国の通貨暴落を引き起こしかねない。このことは、来年のいつかは行われるであろう、現在のゼロ金利からの脱却と関連して、新興経済圏の新たな問題として浮上してくる。
 
 バーナンキ前議長が言ったように、QEの禁じ手が理論的には効果が無いと言った意味するところは、実体経済の力強さの基盤と切っても切れないという指摘にありそうだ。
 
 生産性が力強く芽生えているのか。それはエコノミックスピリツといった内面の問題と密接にリンクした視点でもある。そのような基盤が重要視されない小手先を称して理論上は効果がないという発言につらなったものと理解可能だ。
 
 QEは一見アメリカ国内の問題のように見えるかもしれないが、基軸通貨ドルは腐っても鯛である。中国におけるドルローンは1.2兆ドルである。新興国にあっては、GDPの175%である。富裕国にあっては275%である。ドル需要は、借り入れコストと密接に関ってくる。
 
 量的緩和政策QEは、世界的流行である。イタリアなどはQEを核弾頭なみの破壊力を持つ救世主として恋焦がれている。ただ、ヨーロッパ中央銀行ECBのドラギ議長はイタリアの方向ではあるが、緊縮の礼儀正しさを旨とするドイツを同意させるには困難を伴う。
 
 わが国を思い浮かべるに、はたして左派的、原理主義的野党に、この禁じ手の政策をとり得たであろうか。たぶん取らないだろう。原理原則が、現実の効果より優先度が高いからだ。
 
 これまで以上に政治家の力量とノブレス、オブリュージュが求められる時は無い。

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