K.Wada 2014..10..26
ドイツという国は、結党からまだ一年ちょっとしか経っていない弱小政党に振り回されている。
政権与党メルケル党首率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は、不安と、怯えさえ感じ始めている。
ドイツ連邦議会の八割近い議席は、CDUと連立の相手である、社会民主党(SPD)で占められている。わが国での自民党のような優位な立場にある。
それが連邦議会に議席ゼロの「ドイツのための選択肢」(AfD)に強い恐れをなしている。
AfDは、今年の8月から9月にかけて行われた旧東ドイツでの、3州での、地方議会で10%前後の得票率で、地方議会に議員を送り出した。
ヒットラーの人身掌握術をつかんでいたのではないかと、一瞬、脳裏をよぎったのではないか。
これほどまでに結党以来短期間で驚異的な支持を得たこの党の主張はどこにあったのか。
ドイツのユーロ圏からの離脱という一語に尽きる。
具体的に言うならば、ユーロ圏を廃止して、通貨マルクに戻すこと。南ヨーロッパの破綻国家への支援を連邦議会が阻止しうるように要求。法的なものとしては、ユーロ圏から脱退できるようにEU法の改正をかかげている。
党首はベルント・ルッケ氏。ハンブルク大学の経済学の教授であり、ビジネスサイクルモデルのスペシャリストである。
国民の税金が破綻国家の支援に流用されるのは好ましくないという主張が、ある一定の支持を得たと分析されている。
この党が経済学者によって率いられているところに、ある限界を予感させるものもある。
ヨーロッパ大統一は、ドイツ民族の深いところで流れている歴史的願望であり、昔の言い回しによる大帝国への願望である。このことは、メルケル女史の口癖である、ヨーロッパの統一なくしてドイツはない、という底流に流れている感情である。
弱小政党である、AfDが、壁にぶちあたるとしたら、この歴史認識に慧眼でありうるかにかかっている。
同じように、わが国の橋本氏率いる維新の会は、破竹の勢いで勢力を誇示した時期があった。
極端に大きく成長を遂げられなかったのは、大局観としての歴史認識の構築に志向がともなっていなかったことがあげられる。
現在AfDはヨーロッパ議会で7議席を獲得して、自己の主張を繰り広げている。ヨーロッパセントラルバンク(ECB)のドラギ総裁を攻め立てている。
ドラギ総裁は事あるごとに、いろいろな会合で、ドイツの発言を先取りする形で、量的緩和QEへのプッシュを意識していた。
ドイツの財務大臣であるウォルフガング(不屈な顔つきが、なんともドイツという国を表現しているが)が現状のヨーロッパを称して、2007年の生産高水準であり、高失業率、デフレ圧力、公的債務問題に言及して、景気の浮揚策に意識を向け始めている。これは画期的なことである。
ドイツは連立の相手であるSPDとの約束で、2015年から最低賃金を段階的に、時給で8.5ユーロにすることになっている。
それ程に、経済に余裕のあるドイツということである。