K.Wada 2014..10.12
ユーロの中央銀行であるECBのプレジデントは、マリオ・ドラギ氏である。彼は若かりし頃は毛沢東主義に傾斜したことのある人物である。芯のしっかりとしているような面構えは印象的だ。
ドラギ氏、金融政策に関して、ドイツとの調整には、相当に心血を注いでいたことが、彼のスタンドプレイの背後を読み解くことによって理解される。
ドラギ氏はドイツの出身ではなく、いまヨーロッパのなかで、財政危機で大変な国々の出身である。同じヨーロッパでも、わが世の春に惰眠しているドイツとは違った国家危機、民主主義の危機の真っ只中に多くの国はある。
特に来年のイタリアは危機的なレベルに達しようとしている。。公的債務のスパイラルは、一時の猶予もならない段階に差し掛かった。
ドラギ氏は、金融の方向付けに関して、独自の見解を公の前で披露することがあった。金融、財政の根本はドイツの暗黙の了解を取り付けないものは実体を有しないことを知っていながら、あえて金融の緩和策に言及する。
ヨーロッパとしてもアメリカ中央銀行やイングランド中央銀行がやっているような量的緩和QEをしなければならないという気持ちに傾いているのもまた事実だ。2パーセントのインフレターゲットを定めたいところだ。
ドイツを納得させることは並大抵なことではない。量的緩和というものは、財政のなかの一つのパートナーとしての存在であるという考え方が強い。それに財政というものは議会に所属するもので、その特権が侵害されかねないQEなどというものは、国の財政という民主主義を冒涜するものに他ならない。
現在アメリカはQEの弊害がでてきたために、取りやめようとしている。
わが国は、日銀が毎月買い入れている国債を含む株などの債券は55bnユーロである。日本円にして約7兆円である。それでも2パーセントのインフレターゲットには程遠い。その金は、行くあてがなく、銀行に滞留しているのか、それとも株の購入資金に回り、株式市場の高揚感に一役かっていたのか。景気浮揚感が大きく感じられないのは、実体経済にあまり役立っていないとも考えられる。
QEがハザード戦略であることには変わりが無い。その弊害に気付きだしたためにアメリカはQEから手を引こうとしている。わが国は消費税率10パーセントの確定までは大胆に突き進むものと思える。
日銀の独立性を粉々に辱め、アメリカの暗黙の支持があったとはいえ、これほどまでに大胆に突き進みえた政権の安定さにむしろ賞賛を送るべきなのかもしれない。ただ、思うような成果が出なかった場合の後遺症は計り知れないものとなる。わが国の中央銀行である日銀のバランスシートは破産宣告寸前の零細企業以下の汚さとなり、ドイツのような一本の筋の通ったキャラクターからは程遠いわが国に直面する可能性も否定しきれない。
一つ気になるのは日銀の株式保有は日本生命を抜いて最大の日本株保有者となった。それに加え、最近では、国民年金基金に対しても株式保有の割合を増やすように、安倍政権は命じた。
将来のことよりも、今のアベノミクスが失態だったとは決して言わせないといった決意の現われなのかもしれない。