さりげなくニュース2013.9.29
ドイツでは議会選挙の時期を迎えた。いまヨーロッパはどうなっているのだろうか。欧州債務危機は快方へと向っているのだろうか。
国そのものが没落過程に入る兆しはどこの国にもある。わが国の場合は数十年後には老齢人口の比率が極端に増え、それと並行するかのように労働人口の減少に見舞われる。総人口が一億人を切るのはもう間近だ。
ドイツの財務大臣ヴォルフガング・ショイブレの面構えは非常にいい。鋭い眼光の奥に潜む誠実さ、几帳面さ、どこにでもいる翁といった風情だ。
これまでにドイツのユーロ圏に対する緊縮政策は、さんざんに悪口を言われ続けてきた。マスコミしかり、アカデミズムしかり。ギリシャはその緊縮姿勢に嫌気がさしてユーロからの離脱の動きへと連なった。スペイン、イタリアしかり、塵収集車がやってこず、塵置き場にうず高く据え置かれた映像がマスコミを賑わした。若者の半分近くが失業者となり、暇を持て余す姿が映像として世界中に配信された。
あれから3年、EU圏はどう変わろうとしているのか、変わったのか。オリンピック2020年に立候補したスペインの姿に以前の苦悩の欠片もなかった。
この9月16日フィナンシャルタイムスに一つの見出しが踊った。
'Ignor the doomsayers:Europe is being fixed'ドイツ財務大臣ヴォルフガング・ショイブレ(Wolfgang Schauble)による寄稿文だ。ヨーロッパの現状はこのヘッドラインにすべて表現されていると言っても過言ではない。かいつまんで言えば、これまでヨーロッパを破滅的にしか見てこなかった批判者どもに一撃をくらわせたタイトルである。そして、結論はヨーロッパは自信を取り戻しつつあるという宣言である。
ショイブレ氏は高らかに宣言している。ユーロゾーンは構造的にもサイクル的にも修復課程に明白に入ってきている。この氏の発言はユーロスタット、ユーロ統計局の発表資料からも見て取ることができる。財務大臣の自画自賛ではない。
今年の第二四半期GDP成長率は前期比0.4%の伸びとなっている。(EU平均)。ユーロ圏でも0.3%の伸びとなっている。失業に関しても、今年7月のEU圏では11.0%とアメリカのそれとそんなには大差がなくなってきている。
ヨーロッパ経済危機から3年目にして持続可能な経済成長への道筋をつけたドイツの緊縮政策は誤りではなかったと政策遂行者たちは、いままで以上に自信を深めている。そのことは、財務大臣ショイブレ氏の視線の奥に潜む意志の強さに思いが及ぶ。
では、公的債務危機に陥った国々に構造改革と緊縮を迫りながらユーロ圏の最有力国ドイツは何を政策化しようとしているのか。
2013年5月に発効したツーパックという規則に集約される。その意図するところは経済ガバナンスを強化することにつきる。そのためには、ユーロ圏の予算や財政管理の調和を目指し、共通の予算策定のルールを定めた。
このような規律ができたことにより、公務員比率が高すぎる国の出費予算が見直されたり、また、年金支給開始年齢がとてつもなく若すぎる国などの改革が進むものと考えられる。
そうこうして被支援国は改革に乗り出しアイルランドやポルトガルは10年物国債を発行し、長期債権市場への復帰を成し遂げている。