さりげなくニュース2013.8.30
政府の消費税に関する決断は来月に迫った。あまりにも難しい苦渋の決断を迫ることになる。決断者の胃はキリキリと痛むに違いない。
安倍政権の経済判断に重要な影響を持つであろう中から、二名の者が、消費税の今期の見送り、ひいては、税率の低減を発言しだした。
アベノミクスは、従来の日銀からの決別であった。古いデフレ政策に固執する日銀本来の政策からの決別でもあった。その意味からアベノミクスは、甘い醸造酒の杜氏といったイメージである。
財政の規律、抑制が叫ばれている中、現実は現実として実体を見据える必要がある。わが国の公的債務はGDP比247pc(IMF data)である。この数字は世界でナンバーワンのはずだ。この値は現在の地球上には存在しないといった不名誉な値、というよりは、実験的な値という表現がぴったりする。なぜならば、プーチンの常套句What is about.だからいったいなんだって言うんだ。わが国の失業率は4%台と、世界に冠たる労働者思いの思想がきっちりと定着している。南ヨーロッパの20%、30%台の失業率はざらである。世界の大国であるアメリカ、中国の、貧富の差を計る数値であるジニ係数は押しなべて高い。特にアメリカの思想は、平等感からはますます乖離しだしてきた。能力のあるものが当然に富を独り占めしうるという風潮になってきている。中国の貧富の差はアメリカを十二分に上回っている。公にはジニ係数は0.4といわれているが、実体は0.6ではないかとみられている。0.4という数字は、いつ革命が起きてもおかしくはない数字と言われている。そんなところから、今回の薄熙来裁判は象徴的だ。大衆の不満が、いついかなる時に政治的結集へと向かうか。そんな恐れを共産党指導部はいだいていても不思議ではない。天安門事件の再来は悪夢である。
スウイートな醸造酒造りの杜氏であるアベノミクスの苦悩は見た目より深刻なはずだ。現在の状況はナポレオン戦争時のイギリスに似通っているという指摘がある。19世紀中、当時のイギリスは、工場生産が世界の半分をしめ、航海上に関しても世界の半数を占めていたという実体が決定的に違っている。マネタリストがどうのこうのと言おうが最終的には社会の生産力が如何ほどかに行き着いてしまう。
現在のわが国の状況は二点に絞られてくる。一つは、デフレから脱却して経済の上昇気流に乗れるか。第二点は、膨大な公的債務が、債権市場から攻撃されたときである。第二点に関しては、日銀の黒田体制は、国債の70%を毎月、日銀通りという建物で処理している。今のところ国債の暴落は食い止めている。問題なのは第一点目である。これは消費税問題とも絡む複雑な難しさである。一番の処方箋は税収が増加することに限る。これがすべての解決に連なることは議論の余地の無いことであろう。この視点での関連で消費税はどう位置づけられるかという話になってくる。消費税は税収の増加であることには違いが無い。しかしそれは経済成長による増収とは肌色が決定的に違っている。国民の所得を減らして獲得した増収である。そのことは、経済の上昇気流に水を差すことに連なり、最悪の場合にはデフレスパイラルに陥らないとも限らない。こういう意味で、消費税を上げる決断は簡単なことではない