さりげなくニュース2013.6.16

  
 このところ尖閣問題で中国は軟化のきざしを見せている。両国に領土問題があることを、日本側が認めさえすれば事は沈静化すると、中国側はメッセージを送り続けている。それに対して、外務省を中心にわが国の立場は一貫して、尖閣に関しては、領土問題は存在しないという立場を崩してはいない。
 
 中国は江沢民の太子党と胡錦濤をボスとする共産主義青年団の熾烈な権力闘争の末、現在の習近平総書記を中心とする体制に固まった。政策決定頭脳部の過半は江沢民をボスとする太子党が押さえた。かろうじて首相の座にかつて小澤一郎氏とも親交の深かった李克強氏がついた。
 
 割合と日本への理解が深かった胡錦濤元主席のメッセージに、まともに対処しえなかった野田前首相は、尖閣の国有化に突っ走った。その後の反日騒動は、今でも生々しく記憶に甦る。その後、軍部の独断と見られる準軍事行動であるレーザー照射事件があった。
 
 今や、経済、政治における他国の一挙手一投足が重要性を帯びてくる。
  
 あれほど荒れ狂った中国の若者は、今どういう状態に置かれているのであろうか。
 中国には全土を網羅した失業率のデータはない。公式発表は都市部での4%という数字だけである。農村部を含めた数字は大学やシンクタンクが発表する数字から想像するしかない。そこから見えてくる実体は失業率22%、2億人の失業者である。尖閣問題での反日運動で荒れ狂った若者の実態はどのようなものなのか。30歳までの若者で職に就けないでいる者の数は5,000万人と推定されている。現在、大学を卒業した者の4割はまともな職に就けてはいない。これらの若者がサッカースタジアムで、口にだすのも赤面ものである叫び「シャービー!シャービー!」と荒れ狂う。尖閣問題でガス抜きをした一群の者たちだ。
 
 雇用問題にあっては、日本はなんとも優等生である。ヨーロッパは、ドイツとオーストリアが優等生である以外、最悪である。失業率4%、5%台を維持している国は地球上に数えるほどしかなくなっている。そんななか、昨年まで9%台だったアメリカが現在7%台と健闘している。
 
 どの国も競争力強化と、雇用改善から目をそらすことが出来ないぎりぎりのところに来ている。それらを達成するために、成長戦略は欠かせないものとなっている。
 
 中国は人件費の高騰が産業に相当なプレッシャーとなりつつある。これまでは、安い人件費を武器に国際競争力を勝ち取ってきた。しかし、今後は付加価値の製品も同時にメニューにのせなければならない。それに失敗する時、韓国がIMF管理国家に成り下がった屈辱と同じものを味わうことになりかねない。
 日本の企業が中国で雇っている雇用者数は1,000万人といわれている。この数字はユーロ圏の失業者の半分をまかなう数字である。これは、オーストラリアの人口の半分に匹敵する数でもある。中国としてもいつまでもわが国といがみ合って得はなにもない。
 
 中国にとって、もっと優先順位が高くて、たとえ誰であっても決して譲れない問題は、対アメリカでは台湾である。他に領土問題での新疆ウイグルや、チベット、海では東と南シナ海があげられる。
 
 中国の利点、弱点をみつめながら、上手に付き合う智慧が求められそうだ。