さりげなくニュース2013 .5 31

  
 経済は活況に沸くことが理想である。物が売れない、給与も上がらないこのダラダラ感から早くおさらばしたい。こういう思いが現政権の経済政策を突き動かしているモチーフであろう。面倒くさいことを言わずにヘリコプターから、円札でもドル札でもばら撒けば手っ取り早いではないかとなる。もっともである。
 
 アメリカはリーマンショックから5年目にして、債権は高騰し、株価は絶好調、それにドル高で、万事が絶好調に見える。しかし、大きな病理が内部に沈殿し、表面には見えてこないだけかもしれない。見えている者たちは、マスコミをうまくコントロールして見えないようにしているだけかもしれない。
 
 サブプライムローン危機、ひいては、リーマンショックへと繋がった住宅ローン債権にからむ政策当局者の施策に見て取れる。連銀は、ヘリコプターからドルを撒くかわりに不動産担保債権を買い取っている。市場はこんな危ないものに手を出さないから、連銀が全部引き受けるはめになる。これが市場を崩壊させず、ことの本質が顕になることを防ぎ、万事が正常に機能しているかのような外観を装っている。やばい住宅ローン債権はすべて連銀が買い取る。焦げ付きのために競売をして資金を回収するという手間も省ける。一見いいことずくめのようにも見える。だが病理は内部にまで着々と進行しているのが実体でもある。悪いとは知りながら、この金融の量的緩和政策でドルの大量増刷をやめるわけにはいかないところに病理の根の深さがある。止めた途端にまた大規模の金融危機が発生する。議会筋は、この量的緩和策の危険性に警鐘を鳴らし始めた。行き着くところは連銀の信用喪失と、市場の破壊だ。その前にお得意の他国への侵略という戦争に行動指針を移し、当面の危機を回避するのかもしれない。
 
 わが国の金融、量的緩和政策は、まるで30年代の高橋是清がなした全世界的不況時代の政策を思わせる。デフレから脱却するためにインフレターゲットを2%にさだめ、このインフレを梃子に経済を活性化させる。
 
 高橋是清が日銀による国債引受を解禁したことと同じことを黒田総裁はなそうとしている。インフレには功罪二面があり、年金生活者や預金者には大変な負担を強いることになる。また国債に関しては、市場からの攻撃も待ち構えている。今月の23日に長期国債の金利が1%の大台にのった。これはすごいショックだ。ご承知のように金利が高騰すると政府の借金返済の利子払いは膨大なものとなる。また国債を多数所持している銀行は国債価格の低落で、業務が立ち行かなくなる赤字に転落してしまう。だが日銀が70兆円規模の引き受けにスタンバイしているから国債の未消化ということはない。ケイジアンが財政の均衡という面からマネタリアンを批判する一面である。
 
 24日の長期国債利回りは、10年もので0.82%と少し値をもどした。
 
 わが国国債の外国勢所有率は、10%を超えてはいない。しかし、見くびってはいけない。ヘッジファンドの攻撃が始まっている。国債は、今後下がると踏めば、売りに売りである。この局面が持続した時に、はたしてわが国の銀行団に動揺が走らないだろうか。2%の金利になったら、パニックに陥るかもしれない。
 
 アメリカの戦時体制下、連銀が財務省の債務処理機能と化した前例がある。当時30年ものの利回りは2.5%であった。あるいは高橋是清のデフレ退治に成功し、そして緊縮に舵を切り、理想を全うした結末は軍隊への緊縮が原因の暗殺であった。