さりげなくニュース2013.4.07
わが国の経済運営をなしているテクノクラートたちの心中は穏やかではあるまい。国民の貯蓄を食いつぶし、国の資産を食い潰してその後に残ったものは、借金である国債の増発である。たとえ、市場でさばけなくても日銀が買い取り続ける分には国の資金ショートするということもない。あとは、古典的なインフレ政策で借金の負担を減額していけばいい。この間国民はじわじわと、誰に怒りの矛先を向けるでもなく、真綿で首を絞められ続けることになる。
このようにインフレとは、借金を棒引きにする手段としては悪魔の技であるとともに、病気の中では最悪の不治の病となりえる悪魔の囁きでもある。ドイツは、リヤカー一台にマルクを詰め込んでパン一斤を手に入れた苦しみを味わった国民である。インフレの悪魔の囁きを誰よりも実感として知っている国民でもある。わが国の経済学者連中は、ノーベル賞の経済部門の受賞者ポール・クルーグマンに同調するかのように安易に実感の伴わない経済理論に泡を飛ばしている。注意深く疑ってかかるにこしたことはない。
庶民が誰でも出来る検証方法は長期金利がどのように上昇へと推移していくか。これだけを見守っていさえすれば、悪魔の囁きがいかほどのものか知りえるはずだ。わが国民の勤勉さと、まだ残されている実直さの美徳は、戦後文化という名の下にヤンキースピリツに汚染されてはきたが、いまだ健在である。美徳は次なる経済その他での飛躍であり、目先の流行は、徹底的に疑ってかかるにこしたことはない。
さて、話は、キプロスの銀行危機に移す。キプロスという国家は四国の半分位の面積に約113万人の人口を有している。国内総生産GDPの総額はヨーロッパ共同体EUの約1%の規模である。
今回キプロスは、GDPに匹敵する170億ユーロ、日本円にして約2兆円の救済をEUに求めてきている。EU側は、すんなりといいですよとはいかなかった。それというのも、全銀行預金700億ユーロの半分近くはロシアの金と見られているからだ。その中には性質の悪いマネーロンダリングの資金も混じっているとあっては、誰のための救済なのだとなってしまう。ロシアもキプロスに対して融資していた25億ユーロの条件変更に応ずべきとなった。最終的にはロシア側も折れてEUからの支援策は決定し、銀行業務は2週間ぶりに再開を見た。それにしても、日本円にして1.200万円を超える全預金額の60%は負担を強いられる結果となったのは預金者にはこたえる。海外への送金は当面5.000ユーロを超える部分については国の個別の審査を要する。
キプロスの銀行危機は元はといえば、ユーロ危機の延長であるに過ぎなかった。ギリシャ向け融資の巨額の損失が引き金となったものであった。
ユーロ危機はまだ全然終わってなどいない。ポルトガルが今年の後半には、相当に危ないとは、シティーバンクも野村も認識しているようだ。今年の1月に国際通貨機関IMFによる見解が発表され、ポルトガルの財政調整プログラムは厳しいながらも債権市場への復帰が可能であると示されたばかりでもあった。だが、結論は、財政は税収による押し上げは限界に達して歳出削減を進める必要がある。
これはもうIMFお得意の、国民に緊縮を強いるいつもの主張である。
ドイツ、メルケル率いる選挙が9月におこなわれる。ドイツの地でアンチユーロを掲げる政党の大躍進を許してはならない。
今年はドイツにとっても舵取りの試練の時かもしれない