By kiyoaki Wada
アメリカは大変理不尽な国の代表格になりつつあるが、それに劣らずわが国も理不尽の塊のような国になりつつある。
戦後体制は天皇の権力が完璧に無きものにされ、変わって官僚の権力がトップに躍り出た体制と言い得る。政府や国会よりも上位に力をつけた官僚の権力の源泉は占領支配して現在に続くアメリカを背景にしている。わが国においては企業の力は最下位に位置している。これは、企業が一番強いアメリカ社会との大きな違いでもある。
わが国のアメリカへの従属姿勢は、TPPという貿易に関する交渉事、アメリカ軍隊の国内移転問題につぶさに現れている。茶目っ気たっぷりに日本国憲法の前文を読み替えてみると、これ以上の説明はいらなくなる。「---その権威はアメリカ(国民)に由来し、その権力はアメリカの代表者(国民)がこれを行使し、その福利はアメリカ(国民)がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり---」。と、以上のようになる。
では、マスコミの立場はどのへんに位置づけられるのか。この劣化は目を覆うばかりである。政府の広報に成り下がってしまい独自の視点で物を申す訓練からは遠ざかっている。これは、危険度が一番大きい最たるものであるに違いない。
さて、オバマ大統領が是が非でも年内妥結にこだわったTPPは多数の反対意見により、かなわないものとなった。TPPそのものがアメリカにおける企業サイドから持ち上がり、それを政府が認めて具体化していった経緯がある。今回、あの外交機密暴露で世界中を震撼させたウィキリークスによる暴露が大きなきっかけとなった。アメリカ側の交渉に臨む姿勢は、内容を細部まで示さずに行うといったものであった。今回妥結しなかった問題は、一企業によって国家を訴えることが出来る制度づくりの案が含まれていた。おいおい、アメリカさんよ、いったい何を考えているんだよ、ということになった。わが国は日米同盟の絆を深めるためにこの交渉に参加したために、アメリカの案は何でも呑む姿勢である。ただ牛肉に関しては抵抗したようではある。ゆくゆく、農産物や医薬品ではアメリカの言い分に従う事が予想される。
今となっては、権力構造のリフォームを視野に入れた観のあった民主党が多数をとった革命は、革命の入り口の段階で頓挫し、現在、国内は先祖がえりに落ち着いている。ただ、アメリカがあまりにも理不尽である時、それに付き従うわが国の権力構造に異変が巻き起こる可能性は十分にある。
経済の主導権を握るであろうアジアに軸足を移そうとする、これまでヘゲモニーを握ってきた英米の思惑は、思惑として、ヨーロッパの不協和音が、ますます高くなりつつある。ユーロ圏は二大強国であるドイツとフランスが導いている。この頃この両者は、愛情のない結婚生活を送っているのではないかといった軋みが、いたるところで散見される。フランスはリビアの戦闘、アフリカのマリの紛争には軍隊を出し、シリア攻撃には最初に諸手をあげてアメリカに賛成している。チュートン騎士団、ドイツを意識するかのようにガリック プライドを全面に打ち出しているように見える。これ以上ドイツがケチケチした緊縮の態度から抜け出さないなら、幸せな結婚の門出であったドゴールとアデナウアーの間で取り交わされたエリーゼ条約の精神を葬り去るべしと言わんばかりの険悪さだ。しかし、言葉はお互い紳士的だ。