さりげなくニュース2013.10.27

   
  10月17日に向けたアメリカにおける一連の騒動は何だったのだろうか。
 
  アメリカにおいて今回、政府の累積債務16兆7千億ドルを超える場合には、新たに債務の上限を議会で決め直さなければならないというルールがある。
 共和党はこのルールを逆手にとって政治問題化させる戦略に出た。新たな健康保険に関するオバマケア(官製の健康保険)の実施見送りを迫った。
 
  この間政府は、政府機関の閉鎖で国債の利払いに充当させるといった綱渡りを演じた。デフォルトの足音が背後から忍び寄ってきた。
 
  結果的には、この騒動はギリギリのところで一時の小休止を見た。累積債務の上限を取り外す法案を可決した。ただそれは2月7日までという期限が区切られた。2月7日になれば同じような問題が確実に浮上することになる。
 
  大騒ぎしているアメリカは、反面において誠実である。この上限問題は累積債務の上限をGDP内に留めようとする自制からきている。わが国との比較で見る時、そのことははっきりする。わが国の累積債務はGDPの二倍である1,000兆円である。
 
  今回のアメリカ内での攻防は、アメリカの様々な側面を見せてくれた。共和党支持基盤は南部である。北部の民主党とは、リンカーンの南北戦争から尾を引くライバル関係でもある。たまたまの偶然にしては北部出身の大統領は黒人である。北部は奴隷解放で南部に勝利した。今回、南部は北部出身の大統領の政策であるオバマケアをつぶすことに南部の代表である共和党は議会で全力を尽くした。
 
  以上の側面とともに、共和党も一筋縄ではいかない。多様な方向性をかかえている。共和党内での少数派である茶会派は、グローバル化の旗手のようなアメリカを演じるのではなく、もっと内にこもり地方集権的な国づくりをめざしている。一方アメリカでイスラエル右派を代弁するようなタカ派の存在も強い。それになんといっても金のかかる好戦志向の軍産複合体の存在も強力である。それらが思惑を秘めながら議会で揺さぶりをかける。
 
  デフォルトへの恐怖はある一定の効力を持っているということが証明された一連の騒動でもあった。
 では、このデフォルト騒ぎでアメリカは何を恐れたか。それは一言で、ドル基軸制の喪失に尽きる。ドルを刷れるだけ刷ることができる特権は何にも変えがたい特権である。
 
  この騒動でアメリカは相当に信用上傷ついたのだろうか。これは、BRICSを中心としたドル離れという方程式に行き着く。それは、将来的にBRICSの経済力がアメリカを大きく凌駕しうるかの解を求めることである。BRICSのなかでも中国の動向と切っても切れない問題である。そのことは、中国の成長率は鈍化せずに伸び続けアメリカの経済力に近づけるかというところに帰する。はなはだ悲観的である。
 
  中国のGDPは7兆ドル(統計局2011年データー)とアメリカの15兆ドルの半分にも満たない。中国の成長率は昨年7%台と鈍化基調となっている。それに、将来の経済を占う指標に合計特殊出生率がある。アメリカの2.09に対して中国は1.77であり、やがて深刻な労働力問題に直面するはずだ。BRICS全体のGDPはアメリカには及ばず、ようやくEUと肩を並べる水準である。
  
  21世紀は前世紀と同様に、アメリカの世紀である。このことに疑念を抱かせるように、今回の騒動はいささかも組しない。これが現実であるのかもしれない。