さりげなくニュース2012.8.26

 
 この八月は韓国大統領李明博の暴言に振り回された。竹島をめぐる歴史問題である。韓国側は実効支配している竹島を慰安婦問題とからめて政治問題化しようとした。これにあわてたのがアメリカである。日韓がごたごたし出す事はアメリカにとって現時点では得策ではない。日米韓軍事同盟は、ライバル国家である中国を念頭においた場合に必要なものである。日韓がこれ以上離反するのは得策ではない。間髪をいれず日本ハンドラーであるアーミテージが動いた。日本への命令書である対日政策提言書である。アーミテージ・ナイ報告書をこの15日に取り急ぎ発表した。これで間違いなく李氏も野田氏も刀の鞘をおさめざるを得ない。
 李大統領はこの12月に大統領の任期は切れ再選はない。現在最悪の支持率低下に悩まされ続けている李氏の心中は察してあまりある。
 
 韓国の大統領は退任後、多くが最悪の結末を迎えている。朴正煕暗殺、全斗煥逮捕、盧泰愚逮捕、盧武鉉自殺とわが国では考えられない末路である。次期大統領候補として有力なパク・クネの両親ともに暗殺されている。
 
 李明博大統領の強気の発言の裏には数々の背景があるのは自明である。南北が分断されている現実は、まだ戦後処理が終結していないという最たるものである。その大戦の勝利国であるアメリカの思惑が大きくのしかぶさっているということは否定できない。
 
 ここにいたって北朝鮮には大きな変化が現れた。拉致問題がすべてであるわが国にはとらえきれないシグナルを韓国は読み取っている北の変化である。
 
 キム・ジョンウンの父キム・ジョンイルは先軍政治体制を敷き体制維持のための治安を軍に一任してきた。軍は自らの工場や農場を持ち外貨獲得のために武器の輸出等の経済的特権を有してきた。その軍のトップが李英鎬である。この軍の参謀総長が解任された意味を一番敏感に感じ取ったのは韓国である。その首をとった権力側のボスが張成沢である。キム・ジョンイルの妹婿として労働党のなかで出番をじっと待っていた人物である。この権力闘争は、軍部から経済特権を剥奪して、経済を国家のテクノクラートの手におさめようとする試みである。現在のところ平静を保ってはいるが反乱が起きないと言う保証はない。この北の方向性が本物だとするならば韓国が援助の手を差し伸べない理由はないはずだ。それは軍事緊張を煽る米韓軍事同盟の存在価値を減じる方向に向かわせることは明白である。南北が緊張緩和に向かうことは望ましくない勢力にとっては、なんともおもしろくない。この点イギリスは将来の経済利権に目ざとい。今はピョンヤンにある大使館を舞台に、しっかりと国の行く末に対応しようとしている。わが国のように、最後にはケツマクリして鎖国に走りかねないメンタリティとは比べようの無いキャラである。たぶんわが国の北との接点はキム・ジョンイルの料理人であった藤村健二氏以上にはないといったところであろう。彼は11年前警視庁の部長との電話接触でスパイと疑われて九死に一生をえて日本に逃げ帰った人物ではある。そんな彼がキム・ジョンウンに招待されて、先頃北に行った。やはり何かが変わっているし、動いている観がある。国家間でミクロにこだわるあまりマクロの大きな流れを見失うことは国家の損失である。
 
 北問題は、日本と北朝鮮の国交回復、それに続く東アジア集団安全保障体制へとつらなるものである。ここでようやく戦後体制は終わりを迎えることになる。しかしこれを快く思わない勢力が国内にも外国にも強力に存在するのもまた事実である。