さりげなくニュース2012.7.08


 いま世界で大きな問題は、わが国で起きている消費税の増税問題に端を発した政局の小ささではない。それは、シリア問題でありユーロ圏の経済危機の根の深さである。
 
  ヨーロッパのこれ程までの経済苦境は、誰に責任があるのか。そのような問いを発したくなるはずだ。ギリシャの青年は、ここ何年間も「7万円世代」と揶揄されてきた。手取りの給与が7万円に満たないのだ。スペインという経済規模がユーロ圏で四番目に大きい国の青年が職に就ける割合は二人に一人というのが現状である。若者をこれだけ苦しめることは、暴動や革命につながってもおかしくはない状況である。
 
  1929年のウォール街、株式大暴落は一日にして米国連邦予算の数倍を紙屑にしてしまった。人類はそんな経験をした。この不況を、わが国は産業統制による資源の国家管理でかろうじて乗り切りをはかった。世界はブロック経済へと一気に進み、誰もが知る世界大戦へと突き進むことになる。
 
  今回の世界的信用バブルの発端は誰かと、犯人探しをしたくなる誘惑にかられるのもヨーロッパの心情というものだ。
 
  ヨーロッパの銀行が疲弊したのは、詐欺まがいのサブプライムローンをつかまされたことにその遠因を見出そうとしても不思議ではない。あるいは、もっと真面目に議論するならば、それを中国の安い商品が怒涛のごとく押し寄せたことによる消費者物価の押し下げ効果。そこにバブルを生み出す当局者の油断があったのではないかと、政策者の無能にその責を求めたい誘惑にかられるかもしれない。
 
  ユーロ圏が財政統合まで突き進むのかははっきりしないところではある。ただ、ユーロのテクノクラートが各国政府に入り政策実行をしていくのかもしれない。ポルトガルの首相であり、ヨーロッパ コミションの大統領でもあるバロッソーの言葉が印象的だ。「私たちがG20に来るのは、デモクラシーという言葉を、あるいは、経済の運営の仕方を学びに来ているのではない。私たちはヨーロッパ ユニオンというモデルを誇りに思っているからです」。
 
  話をシリアに戻す。6月の28日木曜日、この動乱16ヶ月間で最悪の事態が起こった。たったの一日の死者数は、これまでの最高で180人を数えた。1929年、ウオール街での、投機業者11人の自殺者をだしブラック サーズデーと言われた。それにちなんで、シリアでの暗黒の木曜日と言われている。
 
  シリア問題はアメリカとロシアといった大国間の話し合いに場は移されている。先頃のクリントン米国務長官とロシアの外相セルゲイ・ラプロフの予備会談は、アナン前国連事務総長の草案文書に対するものであった。ロシア側は、アサドの排除を前提にした和平案には難色を示し合意にはいたらなかった。それらを踏まえて、30日土曜日にジュネーブ会談が開かれた。出席者は外相クラスで、安保理常任理事国の五カ国にトルコ、サウジアラビアが招かれた。当事者であるシリアからの出席はなかった。
 
  アナン文書は、紛争責任の明確化に言及し、国民的対話のもと選挙により新しい政権での、憲法見直しを求めている。
 国民的和解と軍事暴力の即時停止を強く求めている。