さりげなくニュース2012.6.10
デモ隊の一員がユーロ紙幣を燃やす映像がネット上で流れていた。これは、他でもなくユーロ圏の指導者に対する抗議である。特に指導的立場にあるドイツに対する抗議と受け止め得る。
人口が30万人で国土はわが国の北海道と四国を合わせたほどのアイスランドの危機とは訳が違う。スペインは、人口4,500万人も有するユーロ圏第四番目の経済規模を有する国の債務危機である。現在失業率は24.4%、10年ものの国債の利回りは6.5%と市場からそっぽを向かれる一歩手前の数字である。一戸建て価格は少なくとも20%以上は下落し、これらは銀行の負担として重くのしかかってきている。バンキアの銀行株は、取引停止解除後30%下落とクラッシュし、その救済には二兆円ほど必要となる。政府債務は三桁に達し30兆円は償却しなければならないと、ヨーロッパ中央政策研究所は見積もっている。
ドイツの主張ははっきりしている。この債務デフレのスパイラルに陥っているスペインに、財政赤字を8.9%から5.3%まで改善しなさいという要求である。
欧州金融安定基金(EFSF)には、7500億ユーロ、約75兆円の余裕がある。スペインは、この救済基金にすがって銀行システムを救済してもらおうと腹をくくった。そんな噂が流れ出している。これは、スペイン自らの自主権を外国に売り渡すことを意味する。
一方の危機の当事者であるギリシャは、ユーロ圏に留まるか、それとも離脱するかで最後の審判がまもなく降りようとしている。ユーロ圏に留まることを主張している前政権のパパデモス前首相は、離脱する結果として、国内のインフレは30%あるいは、50%に上昇すると読んでいる。
パパデモス自体ギリシャの危機の責任の一端を担った人物といわれても仕方のない面がある。2010年までヨーロッパ中央銀行の副総裁として政策を実行した。無尽蔵のレバレッジでギリシャは贅沢な資金運用に享受してきた。MITで物理と経済の博士号をもつクレバーなパパデモスには結末の一端は読めたはずだ。当然彼は、人口こそ30万人と規模の小さいアイスランドのデフォルトを学んでいたはずだ。少ない元手で大量の債務を重ねることの出来るレバリッジで、金融国家をめざした国の行く末を見ている。ところで、当時インフレは進み、輸入できるものは、必要最小限の食糧と原油のみとなる。しかし、国民の全部が出稼ぎに行ったという話も聞かないし、暴動が起きたという話も聞かない。
あるいは、1994年に始まるメキシコ危機、1997年に始まるアジア危機、それについ最近、2001年のアルゼンチン危機にパパデモスは学んだはずだ。メキシコ危機やアジア危機と今のギリシャの危機は性格に違いがあるのかもしれない。メキシコの場合ペソを15%引き下げるや一斉に投機筋から売りをあびせられ、メキシコ・ペソは40%も値を下げ、資金はどっと引き上げられて不況に陥ってしまった。タイのパーツにも同じように売りをあびせられ、資本は国内からひきあげられ不況におちいってしまった。アルゼンチンの場合は、他国の通貨が切り下げられ、相対的に自国通貨アルゼンチン・ペソが、高止まりとなり輸出の不振で不況へ落ち込んだ。しかし原因を取り除くや最近では8%の高度成長をとげている。
ギリシャにとってユーロから離脱するも地獄、残るも地獄である。まもなく国民による審判が降りることになる。
一時の放漫さはあったとしても、最終的にGDPが成長を遂げ、失業の少ない経済に戻ることが一件落着ということであろうか。
PS 「ヴェネチィア展から今井繁三郎美術館に思いを馳せて」の記事は以下にて。
http://yumin.tyo.ne.jp/12.5.16.html