さりげなくニュース2012.3.11


 中国の成長率は8%を維持できそうにない。そのように指導部は認めた。それは、中国という国にとってはただごとではない。軍事費の伸びにも直接かかわってくる問題でもある。昨年エアクラフト、空母を初めて大海に進水させて世界を驚かせた。排他的経済水域の死守はもちろん、太平洋のグアムを繋ぐ海域へと進出意図を感じさせるものであった。15世紀、中国は海洋国家として鄭和は名をはせた。そんな強い中国を髣髴させるものであった。
 
 アメリカの軍事費は対GDP比9.6%と減少傾向にあるなか、中国の伸びは12.9%と、ひとえに高い経済成長率に支えられての数字でありえた。
 
 8%成長を維持できなくなった中国には、様々な問題が発生するはずだ。一人当たりの所得は7,000ドルと、とても低い数字である。東西地域間での所得格差は、修復の出来ないところまで広がっている。人件費は、東の発展地域で16%から18%の高騰をみせている。。
 
 情報が瞬時に伝わる今、所得の不平等は新たな紛争の種を蒔きかねない。
 
 気の早いところでは、ソ連の没落過程に二重写しを、中国に重ね合わせる論評も出始めている。
 
 安い人件費の無尽蔵の供給があり、技術は諸外国のコピーでまかなってきた。知的財産保護の法整備の遅れは、人や企業の国外への放出につながりかねない。
 
 余談になるが、先頃わが国において、以下のようなことが起こった。政府の肝いりで進めようとした癌研究の最先端頭脳はアメリカの大学に流れたということが、民主党政権になってから起こっている。
 
 話を中国にもどす。比較の意味で中国の急成長は第一次大戦前夜のドイツに似ている。ドイツの場合は、急激にヨーロッパの秩序に戦いを挑んで敗北した。今の中国の場合は、アメリカという超軍事大国が立ちはだかっている。10年の中東での仕事に一応の区切りを付けたアメリカは、今太平洋に食指を伸ばし始めてきている。中国の影響圏に足を踏み入れ、スタンバイといったところだ。
 
 このアメリカは、このところ、イスラエルからとてつもない難題を突きつけられている。イランの核問題である。イスラエル首相ネタニエフは、イラン攻撃に関するアメリカの言質をとろうとしているが、オバマ氏は全然乗り気ではない。多国間を巻き込んでの経済制裁にウエイトを置く姿勢を崩してはいない。空爆をしても長期的解決にはならないという考えを表明している。
 
 わが国に話を戻す。いつ戦乱が起こってもおかしくないイランや気の休まる間もないお隣の中国をとやかく言えるようなわが国ではない。わが国は天皇が政治権力を放棄し、替わって明治維新以来の官僚機構が、選挙で選ばれた政治家の権力を奪っている状態が続いている。政治の側に権力を取り戻そうとした民主党への政権交代は、なりふりかまわない検察権力を総動員した動きの前にあっさりと頓挫させられた。最高裁の動きも微妙に絡みだしている。マスコミにいたっては、目を覆いたくなるようなジャーナリスト精神の喪失状態だ。わが国の民主化は陰険にカモフラージュされている。タイの民主化の動きより数段遅れている。恥ずかしい限りの状況である。最大の責任の一端はマスコミにありそうだ。部数を最大でも100万部ほどに区切り、多数で切磋琢磨する姿に戻すことが、一番必要なことである。マスコミ改革は、近近の必要なことだ。
 
 タイの場合、タクシンという政治家が官僚独裁体制に戦いを挑み、現在亡命中ではあるが、わが国よりは、一歩も二歩も民主化がすすんでいる状態と見なければいけない。