さりげなくニュース2006.12/24
今月13日の衆院外務委員会での麻生外務大臣の発言が注目された。北方領土問題でこれまでの政府の見解とは異なる北方4島一括返還ではなく2等分した面積での返還への言及である。これは従来の外務省の見解からは逸脱したものであり、外務省ロシア課は機能不全に陥っているのではないかと疑いたくなるような発言であった。
北方4島は我国の固有の領土であると言い続けてきたが、ここにきて両国の痛み分けともとれるような発想はどこから出てくるのか疑問に思う向きもある。
2004年に中ロ国境紛争は最後まで残ったヘイシャーズ島とアバガイド島の両国それぞれ半分ずつを得ることで決着を見た国境問題の解決方式としての「フィフティ・フィフティ原則」がある。
中ロの国境紛争問題は北方領土問題とは違い、大陸での問題で陸続きという地理的な違いがある。また中ロの場合、ロシア帝国と清との不平等条約に端を発する帝国主義時代の残滓で中国側に不当に領土を奪われたという被害者意識が強い。北方領土問題の場合は海洋という地理的状態であり、4島はこれまで一度も実行支配されたことのない地での第2次大戦という戦争に起因している。そんな違いがある。
4島4島と連呼するだけではなんの解決にもならない。ほんとうに北方領土問題を解決したいと思うならば、いろいろな案があってもいいのではないかと主張する立場の識者がでてきた。またプーチン大統領の権力が持続している2008年までには解決したいと考えている向きもある。「両国が同じような熱意と誠意を見せれば和解は可能である」と指摘する向きもある。ところで中ロの解決はすんなりと進んだものだろうか。69年のダマンスキー島での大規模な軍事衝突は全面戦争や核戦争にエスカレートする寸前であった。そこから政治解決の道を探っていったという経緯がある。
中国側の戦略の集大成としては印度とも和解し資源外交に集中しうる地盤はこれでようやく整った。次いで台湾問題へすべてを集中しうる状況も築いた。そんな方向性が垣間見られる。中国にとって実行支配もしていないところなど切り捨てても係争をなくして交易にシフトしたほうが国益にかなったと判断しての選択に映る。今の中国の自信は150年前にロシアが弱体化した清になしたように弱体化したロシアを恫喝して再割譲しうる力量を孕んでいると指摘する向きもある。 我国は目先の解決を焦るあまりに将来に禍根を残すことだけは避けなければいけないと指摘する意見がある。世界から「国家の根幹にかかわる大原則を平気で捨て去る国」と蔑すまされないようにと危惧する声もある。
ところでKGB政権であるプーチンのしたたかさにはたして熱意と誠意が通じるであろうか。2島プラスαを振りかざすことで失うものの大きさを指摘する識者もいる。
ただ平和条約を締結していない状態で主立った軍事紛争も起こらずに来ていることに英知はどこかに残されてあるのかもしれない。