さりげなくニュース2012.2.26


  習副主席は、13日から4日間の日程で、アメリカを訪問した。来年早々には胡錦濤国家主席に替わり、新たな中国のリーダーとして予定されている。一方のオバマ大統領は今年中に再選の試練が待ち受けている。
 
  習氏のアメリカ初デビューは、いかようなものであったのか。
 
  中国の指導部が威信に掛けて譲れない一線は経済成長率8%の死守であった。このところアメリカの経済低調、ユーロ圏のマイナス成長近辺での、どん底といった外部環境の影響もあり、中国の成長にも鈍化のシグナルが出始めた。後世の歴史家は、今年2012年をもって、中国の成長が足踏みをはじめた元年と位置づけるかもしれない。そうは言うものの中国当人にとってみれば、ひと事ではない。3億人の中間階級が全体主義国家の不自由な統治に文句も言わず従ってきたのは、ただただ、住宅ローンも払えるし、会社倒産による首切りもないからであって、それらを保障しきれない一党独裁の全体主義国家なら、なにも従順に耐え忍ぶ謂れはない。そういうふうになりかねない。
 
  習氏はオバマ氏の攻撃的な発言に良く耐えている。あたかも故ケ小平が言い残した、これから50年間は世界で、じっとめだたないように、力を蓄えよ、という教えをしっかりと守っているかのようだ。
 
  習氏には言いたいことが山ほどあったに違いない。アメリカが中東の10年に一応のめどを立てるや、今度は一目散に太平洋に出てきた。習氏にとっては環太平洋パート―ナーシップTPPという不可解なものに面食らっているのかもしれない。歴史的に中国の衛星国家であるビルマにたいしても絆を築こうとし始める。軍事的パートナーシップは、オーストラリア、フィリピン、日本、シンガポールと拡大させている。中国が責任ある政治的政策を期待されている北朝鮮、シリア、イランへの対応にアメリカはプレスする。
 
  遡ること2年前、ASSEAN地域フォラムにおいて中国高官の発言が波紋を呼んだことがある。中国が南シナ海で強硬な行動を取ったときだ。中国は大国だが、あなたたちは小国だ。この現実を忘れてはならない。という発言である。こうまで言われた東シナ海近辺の諸国は何を感じるか。こんな言葉一つでアメリカが太平洋に視点を合わせ始めたわけでもないだろうが。中国国内の権力の所在の複雑さを感じさせる。
 
  オバマ氏は習氏との会談で攻撃的であった。辺りから落ち目のアメリカとさんざんいわれようが、太平洋に力を向けると断言している。習氏は、どんな気持ちでこの言葉を聞いていたか。心の中で笑ったかどうかは預かり知らぬところだが、きっと、アメリカさんよ、国内の赤字をきっちりとして、それから借金問題をちゃんとしてから物を言ったらどうですか。まだ今の段階では口が裂けても言えないセリフでもある。たとえアメリカの国債を2兆ドル所有している中国といえども、世界の軍事力の半分を有しているアメリカの力の前に、力の差は歴然としている。
 
  一方、習氏のトークは、とても礼儀正しい。外部世界がどんなにヨタヨタしていようとも支那ーアメリカの協力関係のもと発展に少しの揺らぎもない。と述べている。
 
  アラブの春という革命を目の当たりにして、中国指導部は、政治的無関心な中間層の力に震撼したに違いない。それに中国は体内に新疆ウイグルというイスラムを抱え込んでいる。指導部の気が休まることはない。