さりげなくニュース2012.11.18

 
 世界大戦から60数年、人類は大きな戦争も無く時を経過させてきた。ヨーロッパユニオンEUの試みもその一つだ。
 
 最大の智慧を結集したとしても、やがて平和の賞味期限は確実にやってくるものだと悲観的に身を構えることは簡単なことだ。そう思わずにはいられない兆候がちらほら出てきた。
 
 ユーロ圏の加盟国であるギリシャは先の選挙でユーロ圏に留まる決定をなした。自らの通貨であったドラクマに戻すことを諦めてのユーロへの残留であった。それは、30%でも50%でも好きなだけデバリューションをなして輸出力回復をバネに経済力を回復させる手段の放棄を意味した。
 
 この8月のギリシャにおける若者の失業率は58%である。この数字は何を物語る数字であるのか。これは、社会への脅威であり、民主主義への脅威を意味する。若者が一日の大半をカフェで過ごし、フラストレーションと背中合わせに命を削り続けている。このような社会において民主主義を語ることは無意味なことである。平和の賞味期限が限界に達するのは案外、この辺の綻びからかもしれない。
 
 58%を直視しないマネタリーユニオンのイデオロギーはいったいなにであろうかという疑問が湧いてくる。ユーロの頭脳部は、それは相当なインテリゲンチャーで運営されていることは想像に難くない。だが、その合理的思考は、彼らの視線は、ワーカーとバンカーのどちらを直視しているのかといわれても仕方がない。58%という失業率は、やがて、民主主義をもぶっ飛ばすほどの爆弾にならないとも限らない。
 
 次に、大きく存在感をだしてきた中国経済は、はたしてハードランディングしているのだろうか。ここ二期連続の四半期成長率を見る限り、ハードランディングしているかに見える。ところが、先頃野村證券の中国に対する厳しい見方が発表された。2014年までにハードランディングする確立は三分の一というものだ。その定義とするところは、成長率5%を四期継続するというものだ。
 
 中国経済はここにきて、不動産市場や製造業部門での持ち直しが指摘されてきている。闇の金融システムの動きと相まって、ヘッジファンドが積極的に中国株を食味し始めている。これは短期的な現状であるにすぎず、中国の問題点は従来からいわれてきたままである。過剰投資、過度の信用需要、初歩的金融政策の構造、国営企業の特権、金融自由化による予期せぬ結果の諸問題と数々言われ続けている。もっと長期的に見ると人口動態に起因する現在人口の維持不可能。それによる経済成長におよぼす深刻な影響が懸念されている。それに資源確保も重要なファクターとなってくる。
 
 半世紀以上にわたり欧米の時代が続いていたが、今世紀まもなく確実に経済の主力はアジアに移ることになる。アメリカがTPPといった小手先を駆使しようが、欧米にかつてのような中心が戻ることはなさそうだ。アメリカは財政の崖問題で、新たな借金法案を通さないことには、公務員の給与遅配問題に発展しかねない局面に陥りそうだ。アメリカの財政問題は、長期的には同盟国における駐留米軍の撤退が現実化することになる。わが国の官僚組織の権力の源泉である対米従属は、変貌を余儀なくされるのは必然の流れである。