さりげなくニュース2012.11.04
尖閣問題で領土問題は存在しないと、野田政権は突っぱねている。中国側としては、領土問題は存在するという前提での会話を求めている。その会話に応ずるならば、この問題の火付け役でもあった石原前都知事とでも喜んで会話のテーブルを設定したいというのが本心と考えられる。
多国籍企業化しているわが国の自動車産業は中国での売上減で、相当痛めつけられている。9月の売上は前年減40数%である。東南アジア諸国に生産拠点を移さざるをえない状況に追い込まれないとも限らない。ところでわが国の貿易は、対GDP比で中国との貿易をみるならば、それは数パーセントの値でしかない。韓国や台湾、シンガポールの15%前後の値とは歴然と違いがある。わが国の貿易が中国に依存する割合は20%ほどである。一方中国のわが国への依存度は10%弱である。
現地で生産活動をする多国籍企業としては、現地の政府とは良好な関係を築くのは当然であり、消費拡大のためには、現地の国民とも良好な関係である必要があるのは当然のことである。
中国のわが国への強気の姿勢の反面、中国の経済成長は鈍化のカーブを描き出した。最大のお得意先である欧州の市場が冷え切っていることが最大の要因と考えられている。輸出の減少は、わが国からの部品等の中間財の輸入にも陰りを見せ始めることになる。これが成長率7%台に現れてきている。
中国政府はただ手をこまねいてばかりいるのか。そんなことはない。中央人民銀行は3年半ぶりに1年ものの貸し出し金利を引き下げ景気重視に舵を切り始めた。
バブルが弾け始めたときにどんな有効な方策を見出せるのか当局者の思案のしどころだ。1920年代のアメリカに先例としてある好ましからざる状況が、この中国にも起きている。個人の信用がここ5年間でGDPの100%に達している。それにあまりにも安くなりだした株価が何を物語るのか。上海市場での株価が2008年、あのリーマンショック時の三分の二の水準となっている。
中国の不動産価格のピーク時は、わが国のバブル時の価格を優に超え、サブプライムローンで沸き返るアメリカの不動産価格をも極端に遠く引き離した。ここに来て政府はどのような刺激策を用意するとでも言うのだろうか。地方に2兆ドルの刺激策を打ち放すという噂が駆け巡った。10年に一度の権力交替の大事な政治イベントを前に、腰を据えた政策を打ち出せるのか。江沢民の流れを汲む派閥と胡錦濤の所属する共産主義青年団の系列との関係。それに発言力をつけてきた軍部の動向もある。また先頃失脚した薄熙来にみられるような大衆扇動型の政治手法を求める政治改革のうねりもある。
共産党一党独裁の正当性を担保にするものは年8%の経済成長率であった。それがここにきていとも簡単に破られることになる。富裕層が住み、中国輸出の要である沿岸部の経済成長率はマイナスに落ち込んだ。中国の失業率は現在4%ほどであるが、この数字が高くなるようだと動乱へと一気に突き進むことになりかねない。長期的なネックとしては人口問題が重くのしかかって来た。一人っ子政策の毒素が効いてきたのか、昨年には合計特殊出生率が1.56と、現在人口を維持できない数字となっている。また8億人いる農村戸籍者に対する差別待遇の問題もある。