さりげなくニュース12/10
北朝鮮の核実験に端を発した中川政調会長や麻生外務大臣の我国の核保有に関する議論の必要性についての発言はアメリカをも反応させた。十月十九日のライス国務長官来日の最大の狙いは米国の日本を防衛する決意の再度の表明とみられた。日米同盟はミサイルや核の攻撃に十分にこたえうる能力があるという明言であった。
北朝鮮の核実験の成功は核連鎖反応を生むのではないかと懸念されている。淡々と次を狙っているイランをはじめとして、台湾、韓国、それに核の魅力に駆られている中東のエジプト、サウジアラビア、シリアの国々だ。
核をひとたび保有してしまうとまず確実に放棄することはない。ただ一つの例外は南アフリカだけである。
日本がアメリカに対して核カードを切ったのは沖縄返還を最大の政治課題とした佐藤栄作政権の時である。中国が核武装した時でもある。当時アメリカは日本の核武装を容認してはいなかった。佐藤は個人的には中国が核をもったなら日本も持つべきと考えていたが国民感情はそれを許さないと認識してもいた。当時の外務省の見解は当面核兵器は保有しない政策はとるが核兵器製造の経済的、技術的ポテンシャルは維持するという考えであった。防衛庁に属する「安全保障調査会」では日本の核武装の可能性を研究していた。こういう裏付けがあって核カードは信憑性を増した。結果的には日本の核武装を思いとどまらせアメリカは日本を核の傘の中に位置づけることを保証した。その結末への褒美として後にノーベル賞委員会をしてノーベル賞委員会が侵した最大の誤りと言わしめた佐藤栄作のノーベル平和賞があったと言われている。後に公開された米公文書により佐藤氏は日本の非核政策をナンセンスだと考えていたことが明るみになった。
同じ敗戦国でもあるドイツはどうであろうか。日本など比べようもない外交上手だ。ヨーロッパどうしが戦争をしないようにヨーロッパ共栄圏なるものを作りフランスとは核にあっては運命共同体になっている。ドイツの軍事企業であるシーメンスとフランスの核兵器を作っている元国営のフラムトムは合併したことによりドイツは実質的核保有国である。東アジア共栄圏からはほど遠くなった我国の孤立ぶりが際立つ。
将来アメリカが核の傘をはずすときはどんなときかということに言及してある見方がある。中国、インド、パキスタンが三つ巴の争いが発生したとき日本にアメリカの承認のもとアジアに核を使わせ自らの介入を手控えるというものだ。あるいは、アメリカと中国が対立したとき中国と日本の核軍拡競争という経済を疲弊させる戦略のもと中国との戦争に勝利するというシナリオである。
米中対立時に日本は中国の側に着くという指摘もある。日本は第一次大戦では遅れて強そうな側での参戦をなし中国山東省のドイツの権益をぶんどった。当時ドイツとの関係は最悪であった。アメリカとは非常に仲がよかった。再度勝ち馬に乗ろうとドイツと手を組む変わり身の早さをその身上としている。そんな我国を見つめた目による視点でもある。同じことはアメリカにも言えることでイランを抑えるためにイラクに軍事援助した国が掌をかえすようにイラクを粉々に破壊してしまう。とても綺麗ごとでは済まないのが現実だ。