さりげなくニュース2012.10.7

 
 日中間でごたごたした尖閣問題は少しばかり落ち着きを見せ始めた。中国国内で暴徒化した反日暴動は、ある時を境にピタリと止んだ。その統制の取れた動きに中国社会のある断面を見た。
 
 今回のデモが中国共産党の統制化にあったとするならば、この意味するものは今後の中国に取り返しのつかない危険の芽を残した。もしもデモが国内問題に対するものであったとするならば、今回のような政府による統制はうまくいくだろうかという疑問が残る。1989年の天安門事件がいつ起きても不思議ではない。これほどまでに現状の中国は一触即発の負のエネルギーが溜まっている。
 
 政治が一党独裁の管理体制でありつづけながら、経済は自由に市場経済をやりなさいというケ小平の方向は堅持され続けている。蒋介石の台湾との正当性という精神の底部に淀み続けている一つの中国問題も解決はしていない。
 
 天安門事件以来、ケ小平の後を受け継いだ江沢民は、愛国教育といって徹底的に日本を憎む精神を植えつけてきた。この世代が今のデモの世代と一致している。職に就けない青年の不満や権力者幹部の腐敗という共産党そのものの腐敗から目をそむける役目をしていた。
 
 世界で富の独占という意味では、ロシアのオリガルヒはダントツで国家の富の収奪というニュアンスを持っていた。それとは少しばかり意味合いが違うが、中国の場合は、古典的ピンハネである。鉄道関係の幹部が28億ドル、日本円にして約2.100億円の蓄財をなしている。彼はMr.4%といわれている。(比較の意味でわが国の、かつての首相候補が地元の建設業者から4%の上前をはねる事件があったが、金額的には赤子のようなものだ)。将来の中国共産党の有力な指導者と目されていて、先頃失脚した薄熙来(ハクキライ)の場合は13億ドル(約1.000億円)である。ここで少し横道にそれる。わが国の場合はもっと芸術的である。湾岸戦争のとき協力金としてアメリカに10億ドルを決定したが、少なすぎるということで40億ドルに増額するものの、当時幹事長だった小沢氏の鶴の一声で135億ドルに決定した。しかし、その後外務省にある受領書は100億でしかないとか、いろいろ、使途不明金が騒がれたものの、解明はされていない。その詳細を知っているのは小沢氏、実務担当の当時北米第一課長であった岡本行夫氏。彼は、それを機に早々と役所を退職している。当時大蔵大臣の橋本は、鬼籍に入っている。この教訓は、悪い金は、アメリカを巻き添えにした場合は決して表に出ないという点で芸術の域に達している。そうでないと、冷戦の終結とともに予算の半分以上を経済問題にさしむけているCIAを敵に回すことになる。わが国がアメリカとの交渉で決して優位に立てない理由の一つは、情報戦にある。わが国の有力者のクシャミの一つまでが記録されているという恐ろしい実態である。
 
 横道から戻す。中国のバブルが弾けた時どういう国内の混乱が起きるのか。1990年代のわが国、さかのぽっては、1928のアメリカ連邦銀行の失策とつらなる。中国の銀行の資産は2008年の9兆ドルから二倍の21兆ドルに膨れ上がっている。バブルが弾け、多くの腐敗が白日の下に顕になり、若者に職がないなら政治不安は一気に高まる危険を孕んでいる。アメリカがTPPなどを使って本気で中国の囲い込みをなすならば、中国の暴発へとつながりかねない。それに関連して安全保障上でアメリカの期待が薄れる時、わが国の再軍備は一気に日程に上る必然がある。