さりげなくニュース2012.10.21

 
 ノーベル賞の季節である。科学部門でのわが国の受賞は快挙であった。それとは別に平和賞には、時々の世界の動きが反映されて注目に値する。オバマ大統領が先に受賞したが、世界から核を廃絶しようと呼びかけたのが勇ましかった。それとの比較でわが国の佐藤栄作首相が受賞したのも平和に貢献したという理由によるものであった。佐藤は、密かにわが国の核武装を思案した人物として考えられている。ノーベル賞の受賞スピーチに全世界の核廃絶を呼びかける一言を入れようとした裏の意図は、わが国の核保有国入りを望む気持ちが色濃く反映していたと見られている。ノーベル賞選考委員会をして、最大の失点と言わしめた受賞でもあった。今回の平和賞はEUにあたえられた。ここ60数年間にわたり、ヨーロッパの地を戦場とはしなかった功績が認められたものであった。平和賞をじっくりと見つめてみると世界の動き、関心が煮詰まっているようだ。
 
 このEUの金融問題はEU崩壊の瀬戸際まで行き着いた不安定さだ。
 
 ヨーロッパの地から戦争を排除する試み、あるいは、ヨーロッパ大陸に経済上の復権の試みは、南ヨーロッパの金融危機を前にして試練の時でもある。
 
 金融不安は今スペインに飛び火している。ギリシャ、ポルトガル、アイルランド危機にあっては、全面支援を行う余裕がユーロ圏にはあった。だがスペインにいたっては、それらの国々とは経済規模が違いすぎる。全面支援とはいかない。先頃欧州中央銀行ECBはユーロ圏国家の国債を無制限に買い入れる決定をなした。このことにより金融危機にあえぐ国は、割合と低利に国債を発行できるようになった。これにより、ひとまず国家の破綻は回避できる。
 
 スペインは、1月に190億ユーロ(日本円にして約2兆円近い)の借り換えが待っている。それに合わせるかのように、支援要請に動き出した。支援の条件として緊縮を強力に飲ませられることを嫌っている。ドイツが求めるように行き過ぎた緊縮は景気をよりいっそう冷まし、最悪の雇用情勢をさらに悪化させる。緊縮と支援要請との狭間でぎりぎりのタイミングを計っていた。
 ドイツ、メルケル首相とショイブレ財務相の本音としては、議会がユーロ圏支援策を承認できるのはあと1回でけ。議会の本音としては、生死にかかわる問題でなければ、ドイツ議会は支援策を承認しない。これが本音である。
 スペインの新規債務は600億ユーロから倍の1500億ユーロとも見られている。
 
 ユーロ圏にも劣らず経済の苦境にあえいでいるのがペルシャ人国家、シーア派のイランである。通貨リアルがドルに対して暴落している。食糧などの値上がりは国民生活を直撃している。アメリカ、ヨーロッパから経済制裁を受け続けているのは周知のことだが、アファマドネジャド大統領とスーパー指導者であるハメネイ氏との対立、それ以上に危機に対する政権の無頓着さが一連の危機を増幅させているという指摘がある。まるで、国内に革命が起こる前にイスラエルやアメリカによる攻撃を待ち望んでいるかのような気配すらある。
 
 市街戦を繰り広げているシリアと隣国のトルコに交戦寸前の状態が持ち上がっている。10月7日、シリアから打ち込まれたミサイルは、トルコのAkcakaleの都市に着弾して5人の命を奪った。これに反応したトルコは国境付近にジェット機によるスクランブルをかけた。かつての同盟国シリアとの緊張感は、いやがうえにも高まった。