さりげなくニュース2012.1.15


   ここにきてイラン情勢が非常にきな臭くなってきた。
 イランの核を封じ込めるために、アメリカはイギリスを巻き込んで、イラン原油取引停止の措置に動き出してきている。イランの、原油決済銀行との取引を自粛するように各国に圧力を掛け始めた。
 
  イランとの原油取引量の多い中国は、きっぱりと、米国のイラン制裁に参加しない旨を表明している。それに対して米国は、中国やインドに対してペナルティを課さない扱いだ。やがて来るであろう多極型世界の、一方の覇者である中国に無理強いできる立場にはないアメリカの、ジレンマなのかもしれない。
 
  1月になって中国を訪問していたガイトナー財務長官は、人民元の問題を主要な議題にしたであろうが、当然、イラン制裁についても話し合われたはずだ。ガイトナー氏は、体よくあしらわれたのは目に見えるようだ。胡錦濤国家主席や習氏とは、格が違いすぎる。ガイトナー氏は、その足でわが国を訪問している。当然のようにイラン制裁の要請があった。わが国は、アメリカの言うことを聞かざるを得ない。ただ輸入量を段階的に減らしますので穏便にと、お願いしたもののようだ。わが国にとって全輸入量の10%をしめるイラン原油は大きい。
 
  とってつけたように、イランの核が急にクローズアップされてきた。そもそもの発端は、先頃のIAEA発表による、イランの核開発の新たな証拠の提示であった。オバマ氏はどちらかといえば、IAEAの新たな発見を過少評価している節があり、これまでの対イラン路線を見直す可能性は低いことを示唆している。ところがイスラエルは、イランの核施設を今にも空爆しそうな勢いである。かつて、30年ほど前にイラクのオシラク原子炉を空爆してイラクの核開発を止めた経緯がある。近いところでは3年前シリアで建設中だった核施設を攻撃している。今回もテヘランが核開発能力を取得する前に攻撃を試みたいところだ。この中東に核を保有するのはイスラエル一国である必要があり、他の国が核を保有することはイスラエルの安全保障にとっては死活問題だとなる。とくに、ホロコーストを否定したり、イスラエルを世界地図から抹殺することを公言して憚らないイランが、核武装することは、イスラエルにとっては、看過できないとなる。アメリカは、イスラエルほどに強行ではない節がある。イランの核もコントロール化に置きえるのかもしれない。
 
  そういうアメリカではあるが、ホルムズ海峡に戦艦USS Jojn C Stennisを展開している。イラン側は、ホルムズ海峡近辺でミサイル発射演習を10日間も続けている。2月にはイラン月でもあるバフマンに合わせ、演習を実行する計画だ。
 
  現在のところイランによるホルムズ海峡封鎖は、ブラフのみで現実味を帯びてはいない。世界の原油航行のの三分の一の交通量を誇るホルムズ海峡が、敷き詰められた地雷で封鎖されたら、世界経済に与える影響は甚大なものとなる。アメリカとイギリスは、どんな手段を使ってもそれを阻止すると明言している。世界を味方につけたイラン攻撃の大義名分がつく。仕組まれた真珠湾攻撃の再来である。
 
  この可能性があるとするならば、それは、イランの国内事情と深くかかわってくる。
 
  イラン国内のリーダーの恐れは、先頃の大統領選挙で見られた、国内の不和があげられる。何百万の若者は、透明な民主主義と、言論の自由を求めて、デモを打って出た。そのグリーン革命は、リーダーの逮捕や自宅幽閉でひとまず平穏を保った。しかし中東のジャスミン革命に触発された火の粉が、いつ現リーダーに降り注ぐのか、安閑としてはいられないといったところであろう。アメリカとしては、イスラエルの性急さとはちがって、経済制裁をするなかから、イラン国内の変化を誘発することを意図しているのかもしれない。もし、アメリカがこのような姿勢に従事しつづけるなら、イスラエルの単独攻撃が信憑性をおびてくる。このことは、アメリカとの関係を悪化させようとも、生存をかけたイスラエルの行動パターンとなりえる可能性がある。