さりげなくニュース2011.7.10

 10年後のわが国を占う上で二つの国が示唆に富む。一つはアメリカである。現在のアメリカは孤立主義に傾こうとしている。9.11を契機にアフガニスタンに拳を振り上げては見たものの、10年たっても、この戦争に勝利してはいない。一方のタリバンの戦意は、高まるばかりだ。かつてのソ連もアフガンでつまづき、今まさにアメリカがアフガンでつまづいている。オバマは、名誉ある撤退をなすべくあらゆる手立てを考え始めた。オサマ・ビン・ラディンを殺害したことによって、一応の撤退の大義名分にしようとしたものの、これだけでは、なんとも、名誉ある撤退からは程遠い。
 
 鳴り物入りで登場したオバマへの期待は、幻滅に変わりつつある。これは、わが国の民主党政権への期待はずれと似通っている。この点オバマの方がもっと深刻なのかもしれない。その失望とは、中間階級のアメリカンドリームへの期待を、皆無にするほどの現実にある。裕福層1%が富の40%を占め、国民の全所得の25%を独り占めにしている。こんな格差社会では、夢のかなう機会は少なくなる。。高校生四人に一人が中退している現状では、成人人口の48%を占める白人労働者の大半が高卒以下の学歴しか有していない。大卒労働者は10%にすぎない。
 
 平等で格差のない社会の仕組みには、これまで累進課税や最低賃金、労働組合の力が寄与してきた。オバマへの期待は、もろくも崩れ去った。
 
 わが国との取り決めでもある、海兵隊のグアム移転とのセットで考えられてきた、普天間基地移転問題も、暗礁に乗り上げた。米議会は、グアム移転費用の出費を認めなかった。
 
 アフガンにここ10年間で投じた資金は1兆ドルに上った。撤退を見据えて今後増員が予定される、アフガニスタン人治安部隊にかかる経費は、年間80億ドルと見積もられている。
 
 中東の民主化運動「アラブの春」では、エジプトのムバラクを見捨てたアメリカに思わぬ後遺症が現れた。核の傘で守られてきたサウジアラビアとの関係である。アメリカの核による庇護は期待できなくなったサウジは、独自の核開発の面で、パキスタンに急接近している。このことは、同じようにアメリカの核の傘のもと安住してきた、わが国のすぐ近い将来と、二重写しになるのは目に見えている。
 
 サウジの核戦略は三点ある。一つ目は、中東の非核地帯構想である。しかし、イスラエルが核を放棄することは、まずは考えられない。今一つは、どこかの核の傘に入る。今一つは、独自に核開発に乗り出すこと。この三つの選択肢である。サウジは、独自の核開発に関して、3.000億ドルをオープン入札で出費する用意があることを宣言してもいる。アメリカの中東におけるプレゼンスの喪失から見て、このサウジの動きを阻止しうる力はアメリカにはないと見られている。これらと似た状況が10年もしないうちにわが国にも起こりうる可能性は否定できない。
 
 イランに敵対するサウジアラビア、中国の覇権の前に右往左往するわが国の状況は似通っている。ただ中東の場合は、各国に広がるムスリム同胞団の教祖的国トルコの台頭が上げられる。先の選挙で与党である公正発展党が50%の投票率を獲得してシリア、北アフリカまで影響力をのばし始めている。