自然災害に見舞われたわが国は、これから長らく、放射能という悪魔の物質が出し続ける、魔物と共棲していかなければならない。この物質が突如として人間の制御を超えて、突っ走りだしたための人災でもある。知恵がこの魔物の域まで達していなかったことに尽きる。
さて、人道的軍事介入を銘打って始められたリビアへの戦争行為は、現在どういう状況になっているのか。一言で、膠着状態である。この地域は歴史的にフランスを初めとしてヨーロッパの支配地域であった。フランスが当初よりこの軍事介入に積極的だったことは頷ける。
NATOというのは所詮多数の数集めの集団にすぎず、頭目のアメリカが、パワーからして、NATOのすべてだと言い切ってもいい。そのアメリカが空軍力をリビアから撤退させスタンバイ状態である。それに替わってフランス、イギリス空軍が、ちまちまと反体制軍のサポート役を担っている状況である。カダフィー政府軍は軍事力を益々持って温存し続けている。NATOは、焦りを感じ始めている。それは、反体制軍からの地上軍要請となって現れている。
刻々と、出口の見えない局面へと戦闘は向かっているようだ。欧米は反体制軍に対して軽兵器は提供はしているものの、重兵器は提供してはいない。
終わりなきリビア戦に怯えるNATO軍の姿が鮮明になりつつある。カダフィーの亡命を提案して、安全を確保するといった宣言を欧米はあらゆるチャンネルを通じて発するものの、それ以上の打つ手がないといった状況だ。
この戦争は、出発からして腹が据わっていなかった。国際的軍事介入の、目的が宣言されていなかった。そのなかでカダフィーの排除だけが叫ばれた。まるで、次に起こってはならない、サウジアラビアの混乱に対する、予行演習のような臭いがする。
石油市場における影響力では、リビアの貢献度は、サウジアラビアの足元に、遠く及ばない。サウジは、石油価格の安定のために需給調整弁のような役割を演じてきた。このサウジに混乱が拡大したとき、アメリカに与えるショックは並大抵のものではないはずだ。石油一つを取ってみても、アメリカの経済復興の兆しは、微塵にも砕け散る。
サウジ、アブドラ国王の杞憂は、エジプトの行く末をみているために、アメリカのジレンマより、もっと深刻だ。国内の石油を大多数産出する地域は国内でマイノリティのシーア派が多数居住する地域である。ここに、憎き、ペルシャ湾を挟んで向き合うイランの影を感じることになる。これまでは、ペルシャに対しては、イラクが防波堤のような役目をしていたが、今や現政権はシーア派となっている。北のヨルダンにいたってはパレスナ人が多く住む国である。いやでもイスラエル問題と向き合わなければならない。南ではアルカイタに侵食されている国イエメンと隣り合わせている。こんなところから、ペルシャ湾に突き出している猫の足バーレーの混乱に対しては、軍隊を差し向けた。アメリカは他の中東諸国に対するのとは完全と違った対応をサウジにはなしている。批判するにも温和なものである。
サウジの民主化の動きに対してアメリカは忸怩たる目で見つめている。サウジの若者が欲する仕事に対して、国王側は、6万件の仕事創出を約束したり、100億ドルの進呈。。根本的解決には、程遠い。