さりげなくニュース2011.3.13

  

リビアの状況は、日に日に内戦の様相色濃くなってきた。これまでチュニジアやエジプトといった石油が採れないか、採れたとしても世界経済への影響が微々たるものであったために、アメリカをはじめとしたヨーロッパも静観を決め込んでいた。ところが、ことリビア、アルジェリアやサウジアラビアにいたっては、石油の世界に対する影響は甚大なものとなって来る。

 このところイギリスにおいて、ガソリンはリッターあたり2ポンドになっている。(現在の為替相場ではポンド133円程である。我国ではリッターあたり140円強といったところだ)

 現在ブレント石油価格は、バレル111ドルであるが暴動がサウジに及び出したら倍の200ドルに達するだろうとみられている。

 リビアとアルジェリアの石油供給量は一日当り二百九十万バレルとみられている。これをオペックが全部肩代わりしたとしても日に二百十万バレルと見られている。サウジアラビアの肩代わりに大いなる期待を向けている向きがあるが、サウジの誇張にも限界がありそうだ。

 この問題は、アメリカ財務長官ガイトナーの楽観的発言にもかかわらずアメリカ経済にも深刻な影響を与えかねないと懸念されている。デフレ経済から一転インフレの懸念がでてきた。アメリカの消費者物価指数には住宅部門が含まれているため、住宅のデフレ傾向がインフレを数字上押し下げている。しかし、食料品など消費者の生活に直結するもののインフレ率はアラブ危機によっては、5%にも跳ね上がると見られている。

 アメリカの量的緩和政策は、ドルをジャブジャブと撒き散らす。行き場のない資金は農産物、食料に向い始める。食料費が劇的に高騰すると、それは貧しい層を直撃する事になる。社会不安を増幅させる。

 アメリカの国益は、アラブを首尾良くコントロールすることによって石油を支配する事である。イラクへの攻撃は、その事に尽きた。それは世界の知るところとなった。今、またリビアに軍事攻撃をかけ、独裁者カダフィーを倒すには、躊躇するところだ。トルコなどはアメリカのリビアへの軍事攻撃に反対している。反体制側に被害が増えようとも市民の手によるカダフィー打倒の方が数段ベターだと考えている。イラクに攻め入って10万人のイラク人を殺傷したアメリカの国益というものを目の当たりにした中東の思いは複雑なものである。アメリカが上手に現在までも統治支配出来た日本のノウハウは中東には通じない現実が歴然とある。

 サウジのアブドラ国王は必死だ。暴動を防ぐために、ここ3年の間に360億ドル(3兆円)を支出すると約束した。冗談なのか本気なのか、暴動のツールとなったフェイスブックを1500億ドル、キャッシュで買って機能不全にする。こんなところに支配者の恐れが滲み出てもいる。

 王族と市民のずれは天と地のような隔たりだ。王族側はキャッシュが全てである。市民が求めているのは、選挙権も含む女性の権利獲得であり、イスラム的対話社会であり、法のもとでのルールであり、平等であった。このことをアブドラ国王に直訴した青年は、当局に無視されたばかりでなく、数ヶ月後には投獄されている。このような社会は、教育水準の高くなった市民の前で旧態依然として持続可能でありえるわけがない。