さりげなくニュース2011.12.11

    わが国は、大震災からまだ半年もたってはいないというのに、アメリカの要求は厳しい。つい先頃、新聞報道では、小さく片隅に報じられていた。イラン核疑惑への制裁として、わが国はイランからの原油輸入を止めよという要請である。イランからの原油輸入量は、全輸入量の一割を占める量である。
 
  この要請は今回が初めてではない。わが国がイランのアザデガン油田に一割の権益を有していた。それをアメリカによって放棄させられたという苦い経験がある。
 
  今回のアメリカの要求を受けざるをえない。このアメリカからの要求の前にフランスのサルコジ大統領から同じような提案を受けていた。それに対しては野田政権は断っている。アメリカからであれば、断れない。それがどんなに理不尽なものであったとしても断ることはしない。
 
  環太平洋パートナーシップTPPにおいても、精神構造は同じである。現在交渉中の国は、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナム、シンガポール、マレーシア、ペルー、チリ、ブルネイである。これらの国々全部をあわせた貿易量がわが国一国と等しいということを押さえておく必要がある。
 
  アメリカはこれまで失われた10年のわが国など歯牙にもかけていなかった。ところが急激にアジアに視線を向け始めたアメリカである。中国との貿易赤字は減る兆しはないが、わが国との貿易収支は改善の方向にある。ジェットエンジン、バイオテクノロジー製品、高価な先端型技術製品の輸入国がわが国である。今後、知的所有権や、投資で攻め入リたいところであろう。
 
  これからは、アジアの世紀という前に、EUが今後失われる10年に差し掛かってきている。ユーロ圏のリセッションはすさまじく、来年はGDPの伸びは1.2%、再来年にいたっては、0.2%とみられている。わが国の失われた10年と比べて、雇用悪化という政治問題化しやすい難題をかかえこんでいるところが根が深い。一人当たりのGDPの落ち込みは2011年はユーロ圏の8%である。この数字に関しては、10%台のアメリカ、15%台のイギリスよりは益しではある。
 
  アメリカの中東政策は、簡略に描きだせば、資源を支配するために他国の政権の傀儡化という手段を取ったり、軍事力の行使も躊躇しないという姿勢にあった。イスラム、現在ではイランとの敵対関係は、アメリカそのものが、本質のところではイスラエル人に牛耳られているところにありえる。わが国が対米従属せざるをえないのが、先の敗戦で、国体レベルでの従属を誓ったことに他ならなかった。それとの比較で、ユダヤ人すなわちイスラエルとの関係は、悪性なのか良性なのかはさて置いて、ユダヤ人がアメリカ国家機関の腫瘍となっている。アメリカのユダヤへの従属は、わが国の対米従属のさたではない。
 
  話をもどして、アメリカがアジアに目を向け始めた最大の理由はユーロ圏の失速である。それに、アメリカの強さの象徴である、決済通貨としてのドルの衰退にある。現在、ドル決済のシェアは60%である。もしユーロが順調な歩みを続けていたら、この比率はもっと低下しだしているはずだ。
 
  決定的なことは、これまでのように同時に二つの戦争を賄える力量はないと言うことだけは、断言できそうだ。

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