さりげなくニュース2011.11.13

    この記事がでる頃には、TPP参加問題に一定の進展がでているはずだ。野田政権は、政府の専決事項である条約については権限がある。条約を認めるか認めないかは、国会が決めることでもある。
 
 国民の半分以上がTPP参加に反対したとしても、政府は、条約交渉に参加を表明するはずだ。
 
 先進20カ国会議の映像を見る限りにおいて、わが国の代表の存在感が薄いことに気付く。なぜだろうか。一つ考えられることは、政治力をなくして、かれこれ60年が経過したことにつきる。政治力がない理由は、軍事力の継子扱いの反動として、他国の軍隊が突出した規模でわが国に駐留していることがあげられる。それに対して何の違和感も感じなくなったところに、武力を行使しない戦争の対語でもある、外交力の喪失があげられる。この後遺症たるや、戦闘的日本以上の、害悪となりえるにちがいない。
 
 今回のTPPにあって一番の推進母体は外務省である。かれらの存在意義すなわちレゾンデートルは、国益以上に対米従属をなしえようとする体質にある。
 
 アメリカの市場参入攻撃の前に被害を蒙りそうな地方自治体は多くが反対である。また、厚生省や旧郵政省など、自らの支配権の及ぶ圏内に、他国ルールが参入してくることには、不快を通り越して憤りさえいだくはずだ。小泉政権が突発郵政解散をしてまでも、グローバリズムという名の下に馳せ参じる。アメリカお得意のルール変更という、新自由主義経済理論を引っさげて、他国の市場を有利にこじ開けようとする。
 
 今回のTPPはもっとたちが悪い。来年大統領選挙を控えたオバマの人気に、まちがいなく陰りが出始めている。雇用が一向に改善しない。富の分配に不平等感がくすぶり始めてきている。この時期の支持率40%台は、歴代最悪から二番目である。
 オバマが第二のゴルバチョフになるのかとささやかれ始めてもいる。ノーベル平和賞のイメージをかなぐり捨てなければならない局面に、アメリカは差し掛かってきてもいる。アメリカの弱点は誰もが口には出さないが誰もが知っている。それは、世界通貨、言葉を変えれば機軸通貨、すなわち決済通貨としてのドルを守ることがすべてである。ということは、アメリカが、普通の国になる鍵を握っているのは、アメリカの国債を世界一持っている中国である。また、第二次世界大戦後にのしあがり、これまでのヨーロッパの面子を粉々にしたヤンキーに対抗する、プライドのある、ヨーロッパの復権としてのEUであった。
 
 アメリカはドルを守るために、世界の軍事費の半分近くを有するそのものを、惜しまずに使ってくる戦闘的な国に、ますますなっていくはずだ。
 
 イラクのフセインが石油決済通貨をユーロにすると宣言するや、間もおかず滅ぼされた。
 
 アメリカ国内で産出される石油がもうじき枯渇するので、今後も中東支配は武力にかけても譲れない一線となりえるはずだ。資源獲得の面で中国との摩擦が増大していくことが予想される。
 
 わが国がアメリカにたてついたのは二度ほどあった。独自資源外交での田中角栄である。かれは、政治生命を抹殺された。二度目は、橋本龍太郎のアメリカ国債を売っ払うぞ、発言があった。
 
 とにかく、TPPへの交渉参加が決定された時点で勝負有りである。政治力の違いはなんともしようがない。不平等項目が、国民の知らないところで散りばめられることになる。
 
 だが、石油ショックも跳ね返したガッツの国民の力量に、慰みを感じながら、他国に身をまかすのも、オツな事かもしれない。
 
  「ユーロ圏の危機イタリア」の記述はhttp://yumin.tyo.ne.jp/11.11.13.html