さりげなくニュース11/6
急激な高度経済成長をとげている中国にあって、新しい階層が出現してきた。都市化、大家族など共同体から切り離され、学校、企業のなかで激しい競争に駆りたてられている一群の層だ。彼らはインターネットを駆使するポスト天安門世代である。一人っ子政策の落とし子であり、日本製品に取り囲まれて育った世代だ。
この4月、日本の国連安保理常任理事国入りの表明に対して、日本大使館を襲撃した世代でもある。
昔の科挙という世界で最難関の試験を彷彿させるかのように、だれもが「青華大学」への入学を夢みている世代だ。統一試験の上位二千五百人が入学を許され、卒業生は無条件にハーバードやプリンストン大学から入学を歓迎される。(優秀な学生を、という条件がつかない)。
この大学の成立の経緯は義和団事件に係わる賠償金のアメリカによる一部返還をその原資としている。 アメリカ側としては、アメリカと対等に話せる学生の育成という要望をつけた。
アメリカは進んで優秀な学生を受け入れてきた。
前首相でIQ200の知能を持つと言われる朱鎔基は電気系の終了である。現在の国家主席である胡錦濤は、16才で清華大学に入学し飛び級で水利工程系を卒業している。ライス米国務長官ばりの頭脳の持ち主である。
またIT業界のカリスマ、64年生まれの張朝陽氏は巨万の富を築き経済的立身出世のあこがれの手本となっている。彼は清華大学からMITに進み物理学博士号を取得している。
この高度経済成長下世代の間で流行した言葉がある。「非常村上(すっごく村上)」。作家村上春樹氏に対する流行語である。
2001年以降、外国人作家としては異例の20巻以上の作品集が上海で刊行されている。
村上作品が爆発的に中国の若者達に読まれていることを分析して、ある識者は、かれらの心情が村上作品の寂寥感、孤独感、喪失感にシンパサイズしたのではなかろうかと述べている。(別の見方をするならば、村上当人の世代は、一人称の「ぼくは」をとおして都会ナイズされた愛を志向し、物語的には、シュールレアリズムを果敢に血肉化できる手法を持つ)。
小泉首相は靖国神社参拝問題を投げかけた。戦争を知らない、中国の一党独裁体制の枠には収まりきれない世代に対して向けられた。あたかも世界は中国中心に回るとでも言いたげな華夷思想に小泉特有の依怙地な拒絶の意思表示と見える。彼の計算し尽くしたしたたかさか。あるいは、外交の裏づけとなるバックボーンを持たない日本のストイックな抵抗姿勢なのか。「政冷経熱」を象徴するかのように日本の対外貿易高ではアメリカを抜いて中国がトップに踊り出た。両国の、がっちりと、切っても切れないリンクした姿が見える。。