さりげなくニュース2010.7.11


  世界経済は二番底が懸念されだした。我が国の今年第1四半期の経済成長は年率にして5%近かったこともあり、その浮かれの余韻は、いまだ覚めやっては居ないかのようだ。ところが我が国も含め、特にはヨーロッパを震源地とし、それに中国の経済のスロー化と相まって、景気の二番底が心配されだした。
 我が国の5月の失業率は5.2%に跳ね上がった。家計はここ2ヶ月支出を減らしている。我が国と中国からは景気低迷のデーターが株式市場を通して示され始めている。
 
 財政再建をしないと我が国もギリシャのようにデフォルトしてしまうぞ、といったおどしをIMFよりかけられ、その気になってしまう。財務省の専門家集団の方向性に政治専門性を振り捨てて迎合しようとする姿が10%消費税値上げに見て取れる。消費税を上げるということはある面では給与カットと相通じるものである。行き着くところは増税に名を借りた財政再建である。金利が零パーセント近いとき、経済水準が通常の7から8%減じているときに財政再建を言い出す意味はどこにあるのか。財政再建は5年後10年後でも遅くは無いのではないか、とも言いえる。財務省では決してできない思考をなすのが政治の役割でもありえる。
 
 1930年代の緊縮が人身を荒廃させ民主主義をどのように破壊して行ったかの考察もないがしろには出来ないことだ。いま同じような視点からドイツが矢面に立たされている。ドイツは来年度800億ユーロの緊縮財政を打ち出し問題になっている。ユーロが崩壊寸前のとき必要なことは量的緩和政策であり、ドイツの緊縮政策ではないと言われている。ヨーロッパの危機がこれ以上波及しないためにはドイツの緊縮政策には従うわけにはいかない、EMUヨーロッパ通貨統合をあくまでもドイツが命令し続けるならば、他の国はEMUからの離脱ということになる。ここにEUは崩壊することになる。

 EUでは今、一国繁栄主義と悪口をたたかれながらEMUにとどまるドイツがヨーロッパの命運を握りそうだ。
 歴史的投資家ジョージ・ソロスは大恐慌時のブタペストでユダヤ少年としてナチ下で過ごした。彼は、大恐慌時の賃金カットがどんな政治的効果を与えるものかを、直に体験した。
 その彼がドイツに対して断言する。ドイツが政策を変えないならば通貨同盟から抜けてもらったほうが他の国にとってはいいことだ。(Telegraph:01 Jun 2010)

 さて、世界経済の牽引力として期待されてきた中国の経済が減速中である。過熱気味の不動産市場を沈静化するために金融引き締め、それが中国製造業指数を悪化させている。格付け機関S&Pの予想では、中国のここ5年内外で顕在化する不良債権は多く見積もって38兆円とみられている。バブルの弾け方一つをとってみても日本の二の前にはならないという決意の元、元の切り上げ問題でも政治力にものを言わせて慎重な対応に終始している。

 我が国の10年債の金利は1.06%に下落している。デフレと闘い続けた7年間で最低の水準である。金利が高すぎるのも国家財政はパンクする危険で好ましくは無いが、低すぎるのはそれ以上に経済不安に起因する株式暴落への道でもある。アメリカの10年債金利は2.89%と危険水準である。