さりげなくニュース2010.12.26

   ヨンピョン島を砲撃して2人の軍人と2人の民間人を死亡させた事件の後、事態の収拾に向けて動きが始まった。
 
 ピョンヤンから招待されたのは、ニューメキシコ州知事のビル・リチャードソンである。彼はこれまで何度もピョンヤンを訪れている。朝鮮半島安定のための仲介という役柄である。この点ではピョンヤンの信頼は厚く、軍事施設の見学も許されている。
 
 もう一つの動きはアメリカ国務副長官ジェイムズ・ステンバーグの中国訪問である。これは、中国に圧力をかける仕事である。ピョンヤンに対して無謀な軍事行動を押えるようにとのプレッシャーをかけることに尽きる。
 
 中国はこれまで北のヨンピョン島攻撃に対して北を非難してはいない。中国からの経済援助を含め生殺与奪を中国に握られている北は、中国のコントロール化には至っていない。
 
 北は、90年代の飢饉を脱し、核技術力の進展は、相当の自信となっている。
 
 今回の砲撃事件で韓国側のダメージは相当に大きかった。軍の主脳と防衛相の辞任に繋がっている。それに、イ・ミョンバク大統領への国民の非難があった。
 
 北の軍事的冒険主義に対して、韓国は軍事能力の誇示によって迎え撃つ動きをした。しかし、ヨンピョン島での実弾演習は、現在のところ延期となっている。
 
 韓国とアメリカ軍による共同軍事演習が、問題のある近海、しかも中国と北朝鮮の目と鼻の先で行われる必要があったのか。南西方向にいくらでも演習海域はあったはずである。この点から、韓国アメリカ側の意図的挑発の意思を感じ取ることが出来る。
 
 アメリカにとって50年代の朝鮮戦争は、本腰を入れざるを得ないイデオロギーを念頭に置いた、共産主義体制という敵の存在があった。それとの比較で現在、アメリカが朝鮮半島で戦わなければならない動機は、対イスラムとの比ではない。
 
 こういう視点から見てみると、韓国民は戦争に対して、わが国と同等あるいは、それ以上に安閑としている。ソウルは北と南を分ける境界である不戦ラインに近接しているという非常に不利な立地条件にある。そこを攻撃されたらひとたまりもない。北が死に物狂いで襲い掛かってきたら、アメリカとしては、それをどんなことをしても阻止しようとする、湧き上がる動機がない。韓国は、そのことを理解し始めているようだ。中国との意思疎通に本格的に乗り出し始めている。
 
 わが国の動きはどうか。AFP伝によるガーディアン紙、今月17日の記事で、日本はロシアよりも中国により大きな軍事的脅威を定めた。
 
 先ごろわが国の閣議決定した軍事ガイドラインは、軍事の重点をこれまでの対ロシアを念頭に置いた北海道から南方沖縄方面に移す。それにともない潜水艦、戦闘機をアップグレイドし、ミサイル攻撃に対する抑止力を狙っている。
 
 キム・ジョンイルの戦略は、かつてのインドを学んだかのように、大国間を競わせて、そこからどんな果実を得られるかを楽しんでいるかのようだ。軍事行動も綿密な計算の下、実行されている節がある。落ち目のアメリカに対して、実力を蓄え続ける中国、インドを視野に入れつつ、次々と手を打っている手腕は、なかなかのものである。悔しいながらわが国は、到底及びのつかない、戦争という外交を含めたしたたかさだ。