さりげなくニュース2010.12.12

 メドベージェフ、ロシア大統領が国後を訪問して一ヶ月以上が経過した。先ごろ前原外務大臣は、空から北方領土を視察した。彼は次のような発言を、根室の元島民を前になした。対露交渉に関して「あまりだらだら長くやっていてもいかがなものか」
 
 彼は、メドベージェフの国後訪問に、抗議するかのように、河野駐露大使を一時帰国させた。実際は詳しい事情聴取のためであることが明らかになった。その時も河野氏の発言は、大統領の国後訪問は内政要因によるものであるという説明に終始したと見られている。駐露日本大使館の総力を上げた分析の結果、大統領の国後訪問はありえないという結論であった。ここからどういうことが考えられるか。外務省内におけるロシアンスクールの機能は壊滅状態であろうと結論付けられる。ロシア側の信望が一番に厚かった鈴木宗男を放逐した時に、わが国の対ソ外交は分岐点を迎えた。ノンキャリアながら対露分析官としては高い評価を得ていた佐藤優氏をも放逐した。当時佐藤の上司であった東郷和彦欧亜局長はオランダに、実質的に亡命し、責任の連鎖は免れた。彼の放逐は、生え抜きの外交官にして、以後の職員の士気に取り返しのつかないダメージを与えたものと想像される。これら一連の流れの中での対ロシア情報分析の拙さへとつながっていったと結論づけられる。
 
 日本という国はロシアにどう写ったか。まともに外交というゲームを切磋琢磨して、お互い従事しうる関係にはありえないと、匙をなげられてしまった。ここにきて、重みのない、アドバルーンをあげるのが得意な外務大臣の登場となる。事態はますます悪化するのは目に見えている。
 
 前置きはこのくらいにして、今一番ホットな話題はウィキリークス問題だ。アメリカの機密文書25万点が暴露された。民間人が米遠隔作動によるヘリコプター攻撃で殺害される衝撃的な映像で、世界を驚かせた。
 
 このウィキリークスに関して批判の声が上がりだした。
 
 サウジアラビアといえばわが国と一、二位を争うほどの対米隷属国家である。その国王アブドラが、アメリカに対して懇願した文書が暴露された。アブドラ国王はイランを称して、この蛇の頭を切り離すようアメリカ側に懇願したものだ。当のアフマディネジャド大統領は、一顧だにする価値のない心理戦争もどきのもので、無視を決め込んだ。ヒットラーもどき人物と暴露されたアフマドネジャド大統領としては、外交の奥深い駆け引きに習熟したものとしての当然の態度だ。
 
 アラブのジャーナリストの間で持ち上がっている疑惑として、アメリカ外交機密のなかにイスラエルにダメージになる暴露がないという事への疑問である。書類のある部分だけをセレクトして暴露することが技術的に可能なのかは別として、ウィキリークスの背後にアメリカがいるのではないかとの疑いがではじめている。(Angry Arab blog)。アメリカにとって近々の最重要課題は、イランの核開発を力に訴えても阻止することである。だがアフガン戦争をかかえて同時進行は出来ない。ではどうするか。情報戦からの切り口は当然ありえるはずだ。こういう視点から今回のウィキリークス問題を捉えることも可能だ。
 
 アラブの首脳は、暴露されたことと、実際は、行動としては別物という見解だ。