さりげなくニュース2010.11.28
わが国、大卒の今期採用枠が60%を切っている。就職氷河期である。ギリシャの若者を称して「給与が7万円世代」の揶揄よりはましではあるが。
わが国の経済は自信を喪失している感がある。10年来ずっと続いたデフレから脱却できていない。冒険を冒して投資するといった生産への喜び、チャレンジ精神は遠くになりにけりといった雰囲気だ。将来が心配の余り財布の紐は頑なに閉じられたままだ。貯蓄率はかの消費大国アメリカをも下回る状況だ。政府は弱く、信頼感は徐々に減少し続けている。信頼できない政府のもとで新たな消費行動に打って出ることなど怖くて出来はしない。三流の政治とは、これまでずっと叫ばれてきたことではあった。だが最近では、この三流が害毒をばら撒き始めている。かつては一流の経済と世界に恐れられたわが国の躍動感に、この三流の政治が、己と同じ三流に引き落とそうとしているような印象だ。
ここ10年わが国のGDPは横ばいである。他国に目をやってみよう。先ごろわが国を抜いて二位に浮上した中国は、この間4倍となっている。2012年には、わが国を抜いて中国に次いで三位になりそうな勢いのインドは、この間2倍の成長率を達成している。一方EU国内の多数の苦戦国家を背景に輸出が絶好調のドイツは、この間ドルベースで1.5倍の成長を遂げている。アメリカは現在、失業問題で頭を痛めているが、この間11兆ドルから14兆ドルにGDPを伸ばしている。苦悩に苦悩を重ねているアメリカが、量的緩和政策という諸外国にインフレを撒き散らす一種の貨幣操作に等しいやり方でこの困難な状況から脱出しようとしている。アメリカはわが国と違ってこの状況に対して楽天的である。自信を喪失したわが国にはこれまでと同様、打つ手がない。しかしアメリカの精神には資本主義のエッセンスである「創造的破壊」をいつでもやり遂げうる覚悟がある。
中国はこれまで60年代の文化大革命という国内の権力闘争を闘いぬき、89年の民主化という名の下、一党独裁体制への市民の挑戦という激動を乗り越えた。97年には自信をつけた中国がかつての覇権国家イギリスを一脅しのもと、香港を返還させた。ざっと概観しただけで、国内の激動の嵐をつきぬけてきた。一方のわが国は、アメリカの庇護に全外交努力を傾注することだけしかなにも経験してこない。この集大成が先ごろのオバマ大統領のインド訪問でのお土産に見ることが出来る。わが国が念願してやまなかった安保理常任理事国入りの支持はアメリカからインドに与えられた。わが国とアメリカの同盟という実態はこの程度のものである。中国に対する牽制はインドが国際的プレイヤーとしては重要であるという歴然とした現実を突きつけられた。
30年代には、中国のGDPはアメリカを追い抜き世界一になり世界のGDPの24%を占めるとみられている。(インド、スタンダードチャータード銀行)。
インドの強みは内需志向という点にある。一方、元の切り上げをアメリカから執拗に迫られている中国は輸出主導の経済である。ところが今、高速鉄道で壮大な内需拡大のプランが出てきている。シルクロードを高速鉄道で結ぶという計画である。2025年までに中央アジアを経由してウルムチからドイツまで達する。
「中国と日本は歴史的に、同時に強ではありえない」というフレーズをどう読み解
けばいいのか。