さりげなくニュース2010.11.14
ロシアのメドベージェフ大統領が戦後初めて北方領土を訪問した。これまでどの大統領もこのことをなした者はなかった。
プーチン前大統領の傀儡として据えられた人物が、かくもだいそれた歴史に刻まれる行動をとれたことに驚きを隠せない。二年後にはプーチン首相と大統領選を戦うであろうメドベージェフ。弱いままのイメージであるわけにはいかない、彼なりの事情があったのかもしれない。尖閣諸島問題でのわが国の腰砕けの状況をつぶさに観察していたメドベージェフ氏にとっては、いい機会であった。日本側は、なんの手立ても打つことが出来ないと読みきっての行動だ。
第二次大戦を見直そうという動きがヨーロッパに強まりだしているということも念頭にあったのかもしれない。世界大戦の戦利品をきっちりと固定化したい欲求にかられても不思議ではない。
中国との比較でいえば、ロシアは一度たりとも北方領土をわが国固有の領土と言ったことはない。実効支配することで満足している。両国の主張の隔たりは、ロシア側の、二島なら返してもいい。一方わが国は、断じて四島でなければならない。この隔たりである。一方、中国の尖閣諸島に対する主張は領土を取りに来ている。沖縄をも自国の領土であると気持ちの上で考え始めている異常さである。
眠れる獅子とあだ名され、列強から食いものにされた歴史をもつ中国にとって、ケ小平のもと一党独裁の政治体制のもとで資本主義経済を取り入れた。力がつくまでには欧米の策略には絶対に動ぜず静観せよというケ小平の遺言を頑なに守ってきた。ここにきてGDPは世界二位までにのぼりつめ、外貨準備は2.3兆ドルを超えている。オリンピック、万博をこなし、自他共に認める大国になった。軍事費もアメリカに次ぐ規模になった。かれらが太平洋への出口を求めて進出しだしたのは至極当然のことなのかもしれない。
大国の前でちょっとでも隙を見せたら、今回のように中国やロシアから突きいられてしまう。友愛の理想や平和主義の理想を拡大解釈して現実にあたることは厳に慎まなければならない。
中国の拡大路線に恐々としているのは、ベトナムなど、南シナ海での利害関係のある国々だけではない。ヨーロッパは別の意味で中国と密に関わりをもち始めた。
ヨーロッパのトラブル国といえば、ギリシャを筆頭にアイルランド、イタリア、スペインといった国々だ。投資家が逃げ出した国々の国債を中国は率先して買い求めた。ギリシャやイタリアの港への投資は念入りだ。中国の物資がこれらの港を通じてヨーロッパへ入る手立てとして大切である。ポーランドでの高速道路建設ではヨーロッパ企業を差し置いて中国企業が契約を獲得した。中国労働者を大挙引き連れての工事となる。ドイツに気を使うのは当然で中国側はメルケル首相に互恵関係を呼びかけることになる。
ヨーロッパに攻め入るにはブリュッセル(EU本部)とドイツである。そこまでの過程としてトラブル国といった周辺部から攻め入っている。
中国の本音はただ単に金儲けなのか、あるいは、通貨元の為替問題での世界的批判を抑えたいという目論見もあるのか。ただ言いえることは、アフリカに経済進出したと同様にヨーロッパにも中国は進出しだしたという現実である。それがトロイの馬なのか、まだわかりようもない。