さりげなくニュース2010.10.17
日本の円は対ドル80円になろうとしている。9月15日、83円の時点で数兆円規模の市場介入を行い85円へと値を下げた。わが国が一人、円の価値を下げようと孤軍奮闘をなすものの、欧米が同調してはくれない。アメリカそのものがドルを弱める政策を打ち続けている現状では効果のほどは見えてはこない。
オバマ政権の経済中枢から政権発足当時のブレーンはすべて去り、ガイトナー一人を残すのみとなっている。あの切れ者サマーズが政権から去ったことは象徴的なことであった。
現在のアメリカは10%の失業問題に苦しめられている。11月の中間選挙では共和党の躍進と、現政権の政権党である民主党の不人気が取りざたされてきている。アメリカの経済政策の特効薬としては、アメリカの製造業を食い物にしている中国の輸出攻撃にカウンターパンチを浴びせたいところでもある。表立っては通貨管理国家という汚らしい言葉は避けてはいるものの、とにかく元の価値を切り上げろと叫びたいはずだ。中国側としては、今、元の切り上げに応じたら自国の製造業は壊滅的なダメージをうけるとして、頑としてアメリカの要求を撥ね付けているところだ。中国側としては、通貨の切り上げ問題は、5年ないし、15年のスパンでの対応といった認識をもっている。これはかつてわが国とアメリカとで勃発した貿易戦争では、アメリカ側の要求を呑まざるをえなかったこととは、大きな違いである。それは中国がアメリカに対して巨大な債権国であることである。それはわが国とて同じことではあったが、わが国の場合は、国防上の保護国であり、国を守ってもらうという非自立性国家であるという一番の相違点がある。
先ごろのG7財務省会議で、わが国は市場介入の言い訳がましいことを言ってのけた。それに対して特別な非難はなかった。
アメリカは一種、火遊びのような量的緩和政策(QE)をとっている。資金を債権ファンドや株式ファンドにどっと流している。ドルを弱める政策だ。そのファンド資金は、儲けのためにどういう動きをするのか、すなわち、どんな悪さをするのかと言い換えてもいい。ブラジルの短期債券市場では11%の利回りものが狙われている。もっとも危険なのはこれらの資金が2008年の商品相場急騰のように商品市場に流れ込むことである。市民生活は脅かされ大不況へと連なった。
日本の円高に対しては容認の立場をとるヨーロッパは、どのような状況にあるのだろうか。一言で、ユーロ最大の危機とでも言いえる。ユーロ圏では固定相場で各国独自の通貨政策をとりえない所に、大きな悩みの根っこがある。ドイツのような貿易黒字国がユーロから離れない限りユーロ安に導くことはできない。十年前アルゼンチンが未曾有の不況から活路を得たのはドルペックから離脱して通貨を安くして輸出に精出せたことが幸いした。今の南ヨーロッパの国々は借金を返すために緊縮政策を押し付けられている。スペインのように失業率20%、若年層のそれは40%の状態で、もっと支出を切り詰めることを要求されている。
先月下旬にブリュッセルで繰り広げられた10万人規模のデモの中に、給与のカットをされた警察官を含む公務員の姿もあった。世界の状況は20世紀初頭と似通った様相を見せ始めている。