さりげなくニュース2010.1.17


 先月の中旬に閉会した気候変動枠組み条約(COP15)では多くの茶番劇が繰り広げられた。
 
 炭素排出量の数値割り当ては、決定を見ないという観測が出ていた。アメリカも中国もそれをいいことに何年までには、なんぼ減らしましょうと、大風呂敷を広げてみせた。我が国も他の国が真摯に数字を出すことを条件にとてつもなくハードルの高い数値目標を世界に対していち早く打ち出した。真面目な産業界なら不安にさいなまされる所であったろうが、どこか冷めたものであった。どこか茶番の臭いがプンプンしていた。
 
 地球の温暖化は人為的なものによるというのは、もはや定説化しそうなところまで行っていた。また地球の温暖化はまちがいなく進んでいるというものも定説化しつつあった。ところが温暖化対策推進の指導的立場の研究機関であるイギリスのイーストアングリア大学の気象研究所のデーターがネット上に漏洩するという事故があった。それで気象変動におけるデーターの捏造が明るみにでてしまった。また、気候変動の啓蒙的標語でもあった「ヒマラヤの氷河は2035年までに溶ける」。これが2350年の誤りだと言われると、なんとも二の句が継げなくなってしまう。
 
 地球気候変動にからめて排出量取引にこだわったイギリスの意図するところは、今後排出量を飛躍的に伸ばすであろう発展途上国から合法的に搾取するシステム構築にあったという捉え方もある。COP15で各国別排出量の数値目標にこだわったイギリスの落胆にみてとれる。その責任を発展途上国の代表格である中国に向けられることになった。
 
 COP15の失敗により排出権取引価格は暴落することとになる。1トンあたり13ユーロは、景気後退期よりは高いものの昨夏の30ユーロよりは、かなり下回っている。(By Rowena Mason:Telegraph 21 Dec 2009)。
 
 温暖化が人為的なものなのかどうかはともかくとして、確かなことは今後発展途上国の経済が進展することは否定しえない。それにともないエネルギー資源問題、食糧の高騰、公害問題が地球規模で待ったなしに押し迫ってきている。
 
 中国などは製造業の直接投資をアフリカに展開している。とてつもなく安い労働力のある中国がアフリカに、てこ入れし出している。従来、天然資源にだけ興味があった中国が、ガーナでの投資プロジェクトの30%ほどが製造業になっている。エチオピアでは60%をこえている。現在は低付加価値産業である玩具や靴製品製造ではあるが、どう進化していくかは解らない。世界はゆくゆくは中産階級人口の爆発的増加に直面しなければならなくなる。
 
 今回のCOP15ではなにも決まらなかったが、先進国は金を毎年1,000億ドル発展途上国のために用意して温暖化対策に当てるという有力な構想がでてきた。温暖化に名を借りた地球規模の取り組みになりうると、解釈しなおしてみるとき、COP15は失敗だったとは必ずしも言えない面がある。
 
 世界の意思決定機関がG7からG20に移行したように、中国を筆頭にBRICSや発展途上国の発言力が強まってきている傾向にある。イスラエルが悪でイランやアラブが善であるといった動きも反米非米主導の動きと相通じるものがある。アフガン戦争でNATOの団結に隙間風が吹き込み、先進国のなかにも微妙な変化がでてきている。小沢一郎氏主導の我が国や、EU、カナダ、オーストラリアなどはアメリカ一極から視野を拡大しつつある。