さりげなくニュース2007.1/14

   
 
新年3日のニューヨーク外為市場で対ドル為替レートを見てみる。1ユーロ1.32ドルである。この数字は何を意味しているのか注目する必要がある。2000年前後には0.9ドル前後を行ったり来たりしていたが、その当時から比べて30%ばかりユーロは強含みとなっている。この1日から新たにブルガリア、ルーマニアを新メンバーに加えてEU加盟国は27となる。この両国は先頃までソ連圏に所属し、勤労者一人当たりの平均賃金はEU加盟国平均の二割にも満たない極貧国である。それにルーマニアの場合組織犯罪は目を被うばかりで司法改革が急務な国でもありドイツは最後まで両国の加盟を引き伸ばしたという経緯がある。
 ドイツとフランスの歴史的和解によって成立したEUは現在GDP(国内総生産)14.5兆ドルとアメリカの12兆ドルを超えている。この力強さはイランのOPEC総会においての原油取引のユーロ建てへの変更主張にあらわれている。基軸通貨としてのドルの弱体化を暗示する動きだ。また非常に気になる発言は中国人民銀行の周小川総裁の外貨準備におけるドルの割合を下げユーロの割合を引き上げるとの明言だ。外貨準備高は日本を上回り、一兆ドルを超した中国の発言は重みが違うはずだ。
 各国の外貨準備高の内容は秘密のベールに包まれているが八割はドルすなわち米国財務省証券で保有されているのは公然の秘密であると言われている。
 アメリカは一時期ITブームに乗って財政赤字を解消したかに見えたがジョージ・ブッシュの現在、双子の赤字は過去最高を記録している。2006年財政赤字は4,000億ドル、経常収支赤字は8,000億ドル。GDPの10%前後であるので、かつてメキシコの80%、ブラジルの40%と同一には論じることができないのもまた確かだ。ではこのアメリカの赤字をだれがファイナンスしているのか。第二次対戦終盤ドルの基軸通貨体制を定めたブレトンウッズ協定時はイギリスが担った。国力の低下で担いきれなくなった後を次いだのがドイツであったがアメリカの景気刺激政策を拒否したことにより降りた。カーターの敗北というおまけまでついた。ついで登場したのが我国であり、核の傘で守ってもらう代償と輸出市場の確保ということもありアメリカの世界的規模の覇権を支えることになった。日本のファイナンスがなければベトナム戦争級の対外軍事活動も出来なかったし諸外国に軍隊を駐留させることもできなかったと見られている。我国の外貨準備高は現在約9,000億ドルである。
 1.2兆ドルの双子の赤字(2006年)を日本や中国が連邦債を引き受けることによってアメリカの破綻は免れているというのは一つの常識でもある。
 ドル基準金利が5.25、我国の金利は0.これだけの金利差があっても投資家の主関心がユーロに向くのはユーロの通貨価値としての強含みな安定性からだと見られている。
 恐怖のシナリオとしてドル暴落が話題になるほどにアメリカの衰退は現実になりつつあるもののようだ。